第5章 冬へ…
霧が晴れる頃に 110話 プレゼント
離された手に驚き、楓は思わず「えっ」と声をあげるが、仁は気にせず左ポケットに手を突っ込むと、薄い水色の小さな箱を取り出す。
「クリスマスプレゼント、渡してなかったから」
楓は目を見開き、頬をピンク色に染めつつ仁からゆっくりその小さな箱を受けとる。
「…開けても良い…?」
勿論と仁は頷くと楓は箱を左手に乗せ、慎重に開けていく。
薄い水色の箱からに入っているのは銀、紫、金色と、主にこの3色がかわるがわる付けられているブレスレットだ。
一目みて楓に似合いそうだとすぐに買ってしまったものだった。
「綺麗だね…」
角度を変えていろいろな角度からブレスレットを見ている楓の頃合いを見計らい、仁は静かに言う。
「つけてやるよ」
楓の左手を取り、ブレスレットをそっと楓の手首につける。
(やっぱ、似合うな)
今度は自分の手首を高く掲げ下から見上げるようにして目をキラキラさせてみている楓は本当に仁からのプレゼントを気に入ったようだった。
ガバッ
気持ちが最大限まで高まったのだろう、楓は仁に飛びつき抱き着く。
「ありがとう!!」
飛びついてきた楓を受け止め、楓のしなやかな髪の毛を優しく撫でてると喜びに浸っていた楓の体が何かに気づいたのかピクッと動く。
そしてバツが悪そうに楓は言った。
「仁…ごめんね…私、なんにも用意出来てないの…」
さっきの歓喜の声と反対に、今にも泣き出しそうな声で言う楓が可愛くて…仁に初めてサディストのスイッチが入った。
普段の仁では思いつかないことを考えるようになった仁は少しニヤッと笑い、これはチャンスかと次に取る行動を考える…