第5章 冬へ…
霧が晴れる頃に 109話 観覧車
向かった先は大輪の花のような色鮮やかな観覧車だった。
ここの観覧車はかなり大きく、一周に20分程かかる。時間の関係でこれまで避けていたが、楓も疲れている…そして今ならイルミネーションや夜景も綺麗だろうと、仁はほぼ最高のタイミングで観覧車に乗ることにした。
「これ乗ったら帰ろうな」
優しげな、心から楓を気遣かった声で仁がそういうと楓は微笑みコクリと頷く。
観覧車に乗り込むと瞬間暖かさを感じる。
(すごいな…)
イルミネーションと夜景が重なり合い、美しい、きらびやかな光景が目の前に広がる。
今もしっかり繋がれている手の先にいる楓を見ると瞳をキラキラさせてうっとりと見とれている。
その表情は朝の興奮した、少し、いつもより幼く見えた表情とは大きく異なり、今はいつもより更に大人びた美しい表情をしている。
夜景に見とれる楓からは色気さえも感じるものがあり、いつも知っている楓とは少し違った。
朝は可愛く、夜は美しく…
(今日1日で普段見れない楓を見れたな…)と、やはりいつもとは違う環境の場所に行くのも大切だと認識させられる。
次はどこに行ってみようかと少し考えるが、後で考えることにし、今やるべきことをやろうと仁はずっと繋がれていた手を離した…