第5章 冬へ…
霧が晴れる頃に 111話 スイッチ入り仁
ニヤリと笑った仁は楓を抱きしめたまま、耳元で囁く。
「ものじゃなくて良いから、欲しいな」
甘い声で耳元で言われ楓は緊張が身体を走り固まってしまう。
しかしなにも用意出来なかった自分の情けなさを少しでも埋めるため勇気を出して問う。
「そ、それって…なに…」
自分にできることならと必死で聞くと仁は意地悪なことを言う。
「んー?ヒント教えてやるよ、
クリスマスでヤドリギの下ですること」
「…っ!!それって…!」
意味のわかった楓はすぐに声を上げるが仁はその声を確認してすぐに抱きしめていた楓の体を離し、隣に座る楓の正面に立って静かな声で言う。
「わかったら目、閉じろ」
上から見下ろして言う仁にもう余裕など何処にもない楓はなにも言えない。
「…嫌か?」
そんなことあるわけないと仁自身もわかっていながらも聞くと楓はフルフルと首をふり、意を決して目をつぶる。
そして仁はゆっくりと楓の唇へ…己の唇を重ねた…