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霧が晴れる頃に

第1章 入学


霧が晴れる頃に 10話 初授業

(首、長すぎじゃね!?)
仁だけではなくクラスの全員、最初に思った感想はそれだった。
(スゲェ、俺の手の長さより長い首かよ…)
(キリン…)
(キリンかよ)
(キリン登場…)
みんな口には出さずとも色々と失礼なことを考えている中、その男は自分のクラスで言われたのだろう。
「おいおい、お前らキリンとか思ってねぇよな」と、見事にこちらの考えていることを見抜いた。
するとすぐチャイムが鳴って
「ま、いっか…授業はじめんぞ、そこのデカノッポ号令!」
デカノッポとは誰だ?と、全員同時にクラスを見回すと、いち早く仁は一人当てはまる奴がすぐそこにいるのを見つけた。
高身長で細身でしかも先生が指名しやすい。いわゆるいじりキャラのポジションになったのは仁の隣で行儀良く座ってまだ状況を理解していない、雨宮慶だった。
仁が(こいつ…分かれよ…)と少々悪態を頭の中でつきながら
「おい、デカノッポ、お前だ」
と、仁がこっそり教えると
「えっ、ええええええ!!先生!デカノッポって俺!?」と、
仁がこっそり教えたのが無駄になる大声で驚いて見せた。
一斉に全員が慶と仁を見る。(ちなみに林は笑いを堪えていた。)
「そうだ、お前だお前、あとうるさい、早く号令」
と、その教師が再び慶を指し、慶は仕方なく、しかし爽やかに
「きょうつけ!礼!」
と、号令をかけ、授業は始まった。

その教師は八雲という名らしい。身長はおよそ170cmほどでごく一般的だが横幅は慶の事を笑えないような幅、つまりガリガリだった。
八雲は早速授業に取りかかった。
「まず小学校の歴史で出てくる日本で最初の時代を何といった?」
「はい!先生!古代文明です!」と、元気に自信満々に言い放ったのはゲリラ豪だった。
八雲は飽きれ笑いしながら
「おー、俺は時代って言ったんだけどな。」
豪は急に恥ずかしくなったのだろう、すごすご手を下げていった。
そのあと手を挙げたのは楓だった。
(あぁ…あいつもいたんだっけな…)
仁は正直な感想を抱いたが間違っても口にすまいと口を固く閉じた。
「縄文時代です。」
と、中学生とは思えない落ち着いた感じで静かに答えた。
(おーおー、大人びた奴だな)
仁もそんなふうに思われていたのも知らずにそんなこと考えていると隣で慶が
「縄の奴としか思い浮かばなかったな…」
と、静かに呟いていた…
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