第1章 全面戦争
ほっとして大学ノートに目を移す。ギョッとした。ノートにはなんの文字も書かれていなかったから。黒板にはびっしりと文字が書かれていてとても休み時間では写せない量だ。
「なんや、お前。ノートに何も書いてないやないか、授業中寝よったんちゃうか?
おとなしそうに見えてグレる奴もおるんやのぅ」
そういうわけではないんですが。否定したかったが恥ずかしくなり、シャーペンを握りしめることしかできない。服部くんは向きを変えて。
「おい!〇〇!黒板まだ消さんといてや!うつしてる子がおるから」と黒板を消す係の子に注意をしてくれた。優しい。マジで優しいこの人。なんて誰にでも親切な人なんだろう。
「あ、ありがとう」
「はい、今度は寝ないようにし。
あ、おれの携帯使って写真送ったろか?無理やろ移すの」
「え!」
まさかいきなり連絡先交換!?だとしたら早い。
服部くんが取り出したのはスマホかと思いきやガラケー。時代背景を考えれば当然か。あ、でも私が高校生になったときってガラケーなんてなくって。ガラケーの扱い、わからないんだけどな。でも連絡先さえ交換していればいくらでも話せるし服部くんと話す時間も増えるかも。いきなり舞い降りたチャンス。手離す訳にはいかない。運良くあった自分のガラケーをみて、母親が使っていたのを思い出しながらメアドの画面を開く。初めてのメール交換に息巻きすぎだよ。落ち着いて。
深呼吸をして、はじめてのメアド交換に集中した。心が躍っているその時だった。
「平次〜!」
甲高い明るい声がして心臓がキュッと音を立てて縮まった気がした。心拍数が速くなってくる。そりゃ、あの子もいるに決まってるよね。心の中で静かに悟る。だってコナンのキャラクターだもの。となるとコナンも連載してる時か。心のどこかで私と服部くんだけだといいなって思ってた。
「おー和葉ぁ!」
「何してんのぉ?」
「この子寝てたみたいやから黒板うつさせてるとこ!10分じゃ写せないだろうし、写真も送っとこ思うて」
「ほーん、授業中は寝たらあかんで?」
すらすらと会話する二人。同じ大阪人だからだろうか。テンポが速く感じる。和葉がこちらをのぞいてくるのが、寝て授業をサボった恥ずかしい学生そのもので無性に恥ずかしかった。