第18章 朝
「……ただ、何もかも解決したわけではない」
私は静かに頷いた。
私たちの関係が、公に認められたわけではない。高専の上層部が、私たちの恋愛を快く思っていないことも変わらない。
これからも、気をつけて生活していかなければならないのだ。
「……うん。わかってるよ」
「……すまない。お前に寂しい思いをさせた」
脹相は私の手を握り、視線を落とした。
指先に、少しだけ力がこもる。
私はそっと彼の頬に手を添えると脹相の瞳が揺れた。
「……それはお互い様だよ」
私は微笑んだ。
「だから、これからも一緒に考えていこう?」
脹相はしばらく私を見つめていたが、やがて静かに頷いた。
「……お前は、強いな」
「そうかな?」
「ああ。俺が思っている以上に、ずっと」
その言葉が照れくさくて、私は小さく笑った。
すると脹相は、改めて私の手を両手で包み込んだ。
「……俺は、これからもお前のそばにいたい」
真剣な瞳が、まっすぐに私を見つめる。
「公にはできない。これから先、また離れなければならない日が来るかもしれない。それでも……俺は、お前と暮らしたい。朝、目を覚ましたときに隣にいてほしい。帰ってきたら、お前にただいまと言いたい」
少しだけ、声が柔らかくなった。
「……お前の笑顔を、これからも見ていたい」
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
私は握られた手を握り返し、微笑んだ。
「……うん。私も、脹相のそばにいたい」
「……これからも、ずっと?」
「うん。だって、脹相は私の大好きな恋人だもん」
「…………っ」
脹相の耳が、みるみる赤くなった。
「……お前は、そういうことを簡単に言うな」
「えー、どうして?」
「……どうしてもだ」
真剣な顔で言うものだから、私は思わず笑ってしまった。
「ふふっ、照れてる?」
「……照れていない」