第18章 朝
――待て。
一か月以上も離れていた恋人が、今、自分の腕の届くところにいる。
抱きしめようと思えば、いくらでも抱きしめられる。
しかも彼女は、自分からこうして甘えてくれているのだ。
…触れたい。
正直なところ。
もう少しだけ近くに引き寄せたい。抱きしめるだけでは足りないと思ってしまうほど、彼女が恋しかった。
「……っ、」
「んー?」
彼女はきょとんと首を傾げた。
近い。
……近すぎる。
いや、むしろ、ずっと望んでいた距離だ。
けれど、帰ってきて早々、自分の欲ばかりを優先するのは違う気がした。
彼女はただ、再会できたことを喜んでくれている。
今はその気持ちを、何よりも大切にしたかった。
「…………」
脹相はそっと息を吐き、気持ちを落ち着かせ、
そして、彼女の頭に手を伸ばした。
大きな手のひらで、柔らかな髪を優しく撫でる。
「……おはよう」
今度は、ちゃんと言えた。
「……うんっ、おはよう!」
彼女はますます嬉しそうに笑った。
その笑顔を見た瞬間、脹相の強張っていた肩から、ようやく力が抜けていった。