第17章 安眠できると思ったのに
そもそも、下着をつけているかどうかなど、本人にとっては何でもないことなのかもしれない。
……そうだ。
何でもないことだ。
俺が勝手に意識しているだけで。
「……ん、ちょうそう……」
「…………っ」
不意に名前を呼ばれ、肩が跳ねた。
彼女は目を覚ますことなく、俺の胸元に顔を埋める。
そして、さらに身体を寄せてきた。
「んん゛?」
これは…触れてもいいのか?
いや。今日俺が帰ってきたのは前から知っていたことではなかったのだ。
きっと、そういうことではないと思い、留まる。
「ちょう…そ」
……やめてくれ。
いや、やめないでほしい。
いや、どちらだ。
俺は自分の思考に頭を抱えたくなった。
彼女は何も知らない。
俺が今、どれほど困っているのかも。
久しぶりに帰ってきた恋人を抱きしめているだけなのに、たった一つの疑問が頭から離れなくなってしまった男のことなど、知る由もないだろう。
「……好き……」
寝言だった。
あまりにも小さな声だったが、確かにそう聞こえた。
…………。
………………。
駄目だ。
本当に、駄目だ。
俺は片手で顔を覆った。
好きだと言われて嬉しくないわけがない。
むしろ、嬉しい。
嬉しいのだが、今それを言われると、どうしていいかわからなくなる。
「……俺もだ」
かろうじて、それだけを返した。
彼女は返事を聞いたわけでもないのに、満足したように小さく笑った。
それから、俺の胸に頬を寄せたまま、再び静かな寝息を立て始める。