第16章 帰宅
「…………」
胸の奥が、ぎゅっと締めつけられた。
彼女は、俺のいない家で、こうして眠っていたのか。
俺がいなくなったあとも、いつもどおりに生活して。
それでも、眠るときには俺の上着を握りしめていた。
彼女は明るい。
俺が離れて暮らすことになったときも、会える機会があれば笑顔で会いに行くと言ってくれた。
俺を安心させるためだったのだろう。
実際、あの言葉には救われた。
けれど。
彼女だって、寂しかったのではないか。
「……ばかだな、お前は」
声が震えそうになり、俺は唇を結んだ。
ばかだなんて、思っていない。
むしろ、どうしようもないほど愛おしかった。
俺はベッドのそばに膝をつき、彼女の顔をそっと覗き込んだ。
「……ただいま」
小さな声で告げる。
返事はない。
それでも、言わずにはいられなかった。
「帰ってきたぞ」
握りしめられた上着を見つめる。
それを取り上げることなど、できなかった。
俺は着替えを済ませると、彼女を起こさないように、そっとベッドへ入った。
少しだけ距離を空けて横になる。
会いたかった。
ずっと、会いたかった。
「……お前がいないと、駄目だな」
誰にも聞こえない声で呟く。
そのとき。
「……ん……」
小さな声がした。
彼女がゆっくりと寝返りを打ち、握っていた上着を胸元へ引き寄せる。
そして、ぼんやりと目を開けた。