第15章 牽制
――五条悟視点。
「ねえ、学長。僕の大切な子なんだけど、いつまで調べんの?」
五条は楽巌寺の机に身を乗り出し、にっこりと笑った。
「彼女の行動も、任務先での様子も。最近、ずいぶん熱心に調べてるみたいじゃない?」
「高専の人間について把握しておくのは当然だ」
「ふうん? じゃあ、脹相とのことも?」
楽巌寺の眉間に皺が寄った。
「……呪いと人間が恋愛関係になるなど、言語道断だ」
「おやおや。厳しいねえ」
「当然だ。個人的な情で判断を誤るようなことがあってはならん」
五条は笑みを崩さないまま、尋ねた。
「それで、脹相は処分するの?」
「現時点では、その必要はない」
意外な返答に、五条はわずかに目を細めた。
楽巌寺は机の上の書類を手に取った。
「あの呪いは虎杖悠仁を弟と認識しておる。その虎杖を守るため、こちらに協力しているのだろう」
「うん。そうみたいだね」
「ならば、その関係を利用すればよい。人間に害をなさず、こちらの任務に協力しているのであれば、わざわざ処分する理由はない」
「へえ。ずいぶん合理的じゃない?」
「当然だ。使えるものを、感情だけで捨てる必要はない」
楽巌寺はそこで一度言葉を切った。
「それに、虎杖悠仁には宿儺の指を取り込ませておる」
五条の笑みが、ほんの少しだけ薄くなった。
「……ああ、そういう話?」
「宿儺の指をすべて取り込んだのち、虎杖は処刑される。それが現在の決定だ」
「うん」
「ならば、それまではあの呪いも生かしておけばよい。こちらにとっても利用価値がある」
楽巌寺は五条を見据えた。
「虎杖の処刑を執行することになれば、特級術師であるお前か乙骨憂太が対処することになるだろう」
「……僕か憂太、ねえ」
「そうだ。お前たちには、その責任を果たしてもらう」
五条は、にこりと笑った。
「はいはい。上の人たちも、ずいぶん面倒なことを考えるよねえ」
――まあ、抜け道なんてどうとでもできるけど。
そもそも、決定された処刑をそのまま実行する必要があるのか。
表向きの手順を整えることも、状況を覆すために手を回すことも、やりようはいくらでもある。
もちろん、今ここで口にするつもりはなかった。