第13章 密会〜五条家
部屋に入ると、彼女は懐かしそうに辺りを見回したあと、俺を振り返った。
「ねえ、脹相」
「何だ」
「……本当は、キッチンに来たとき、抱きしめたかったでしょ?」
脹相の動きが止まった。
「……なぜ分かった」
「だって、すごく我慢してる顔してたもん」
「……見ていたのか」
「うん、ちゃんと人目、気にしてくれたんでしょ?」
彼女はくすくす笑う。
「他人の家だからな。我慢くらいできる。」
そう言っている脹相に両腕を広げた。
「……そっか?それじゃ、今は?」
その瞬間、脹相の表情がふっと緩んだ。
「……いいのか」
「もちろん」
彼は迷わず彼女を抱きしめた。
ぎゅっと。
会えなかった時間を埋めるように、私も脹相の背中に腕を回し、胸元に顔を埋める。
「……会いたかった」
脹相が、小さな声で呟いた。
「うん。私も」
「……お前が料理をしている姿を見ていたら、家で過ごしていた時を思い出した」
「そうなの?」
彼女は少しだけ顔を上げた。
「また一緒に暮らせるようになるよ」
「……ああ」
脹相は彼女を見つめ、やがて頷いた。
「……そうだな」
私が背伸びをして、脹相の頬にキスをすると、脹相は少し困ったように目を細めた。
「……それでは足りない」
「え?」
「……もう一度、してくれ」
その言葉があまりにも素直で、彼女は思わず笑ってしまった。
「ふふ。いいよ」
頬にキスをする。
脹相も彼女の頬にそっと口づけた。
二人は顔を見合わせ、照れくさそうに笑う。
まだ、時間はある。
夕食の支度が終わるまで。そして五条が帰ってくるまで。
今日はもう少しだけ、恋人らしく甘えていてもいい。
脹相は彼女の手を握り直し、静かに言った。