第11章 密会〜研究室
「……約束だぞ」
「うん、約束」
私は笑って、机の上に置いてあった試験管を手に取った。
「それじゃあ、今日は脹相の血液を少しもらいたいんだけど、これに入れられる?」
差し出した試験管を、脹相が受け取る。
「この程度でいいのか?」
「うん。検査に使う分だけで大丈夫」
「ああ、分かった」
脹相は試験管を持ち、慎重に血液の量を調整し始めた。
呪力を操るときと同じように、彼は自分の血液も自在に扱うことができる。必要以上に出すこともなく、試験管の中に必要な量だけを正確に収めていく。
私は思わず身を乗り出した。
「わ、すごい!」
脹相の手が止まる。
「……そうか?」
「うん! ぴったりだよ。こんなに細かく調整できるんだね」
「これくらいは難しくない」
そう言いながらも、脹相の表情はどこか嬉しそうだった。
「でも、すごいよ。ありがとう、脹相!」
私は試験管を受け取って、慎重にラックへ置いた。
これで今日の採取はひとまず終わり。
記録用紙に必要事項を書き込み、器具を片づけてから、私は脹相のほうへ向き直った。
「協力してくれてありがとう」
そう言って、私は彼の頭を優しく撫でた。
さらりとした黒髪に指を通す。
「よしよし。上手だったね」
「……子ども扱いするな」
「えー? 褒めてるんだよ?」
「分かっている」
脹相はそう答えたものの、私の手を払いのけようとはしなかった。
むしろ、もう少し撫でてほしそうに、ほんのわずかに頭を傾けている。
それがかわいくて、私はもう一度彼の髪を撫でた。