第11章 密会〜研究室
私は試験管を受け取りながら、ふと思い出したように尋ねた。
「そういえば、今回の検体、自分で採取してきてくれたんだよね?」
「ああ」
「ありがとう。助かったよ。ちゃんと必要な量もあるね」
そう言うと、脹相は少しだけ眉を寄せた。
「……だが、苦労した」
「え? 採取するのが?」
「ああ」
意外な返事に、私は目を丸くする。
「脹相でも難しいことがあるんだ?」
脹相は少し黙ってから、私を見た。
「……お前がいないからだ」
「えっ」
「……お前がいれば、もっと簡単だった」
私は思わず頬を緩めた。
「そっか。私がいなくて困っちゃったんだ?」
「……そう言っている」
少し拗ねたような返事がかわいくて、私は笑ってしまう。
「ごめんね。でも、ちゃんと持ってきてくれてありがとう。すごく助かったよ」
「……ああ」
「次は一緒に…できるといいね」
「そうだな」
脹相はそう答えてから、ほんの少しだけ視線を逸らした。
「……研究室では、できないのか?」
「え?」
「いや。お前がいるほうが、俺も安心する」
その言葉に、私は思わず笑顔になる。
「もう、脹相ったら。研究室では無理だよ」
「分かっている」
「終わったら、ちゃんと甘えていいから」
そう付け加えると、脹相はようやくこちらを向いた。