第13章 尋問には黙秘を
「これから晩ご飯食べに行ってくるね」
表示された彼女の名前に嬉々として飛びついて数秒、トーク画面を開いた俺は一瞬で眉間の皺を深くする
「誰とですか」
「相澤くんと山田くんだよ」
心を落ち着かせたくて深く息を吐く、あの人と二人きりでは無いとは言え学生時代からの付き合い、マイクさんは間違いなくイレイザーと彼女の関係性を知っている
天地がひっくり返っても俺の味方に回る事など無いだろう
「会わないって言ってたじゃないですか」
「俺は一人であの部屋に帰るのに」
「場所教えて下さい、迎えに行くんで」
打っては消して打っては消して、椅子に深く項垂れ目を閉じる
———やけに焦っているな、ホークス
耳の中に木霊する塚内さんの声、思い切り図星を突かれた苛立ちと情けなさが込み上げる
相手は大人を絵に描いたようなあの二人、衝動だけで動いては何処かできっと足元を掬われるだろう
「楽しんできて下さいね」
寝る前に声聞けたら嬉しいです、抑えに抑えた二文を画面にぽつぽつと浮かばせる
まだ独占欲を押し付けられる関係じゃない、あの夜の小さな告白を俺が聞いていた事すら彼女は知らないのだから
「ありがとう、遅くなったら迷惑かけちゃうから」
また明日以降に連絡させてね、「おやすみ」の文字の下で颯爽とポーズを決めるジーニストのスタンプにエンデヴァーを返す
スタンプの送り合いはやり取りを終わらせてしまう、明日以降なんて言わないで下さいよ、寂しくなくても電話しようって、そう言ってくれたじゃないですか
「・・俺を気遣っての発言なんでしょうけど」
疎いなぁ、襲いくる寂しさに心が酷く騒つく
これから彼女はあの人とどんな時間を過ごすのだろうか、想像するだけで悶々とした気持ちが重くのしかかって
「・・お持ち帰りされたりして」
いくら何でもありえない、自信を持ってそう言い切れないのはもちろん、昨晩の事が頭をよぎるからで
「あの人がそう仕向ければ、容易いやろ・・」
イレイザーの部屋で食事を作り、風呂に入り服を借りる、それだけじゃない
おそらく俺よりもずっとずっと容易く同じベッドで眠るように仕向ける事だってきっと、
「・・めぐさん」
早く俺のものになって下さいよ、届く事の無い言葉が明る過ぎる部屋に溶ける、白い窓硝子が狭い視界をどこまでも曇らせていた