第12章 十八番ですから
不貞腐れたような表情、手招きで会議室に呼ばれるのがあまりにも久しぶりすぎて思わず小さく笑みが溢れる
私が着任したばかりの頃の貴方はまだ十代で、壮絶な訓練と残酷な実践の毎日の中で心を擦り減らしている、そしてそれを決して我々に見せない大人びた子供だった
———どうしたら良いか分からんたい、
大人って怖か、思い切り顔を顰めたあどけない横顔に罪悪感が募る
涼しい風の吹くビルの屋上、手摺に凭れた彼が地団駄を踏んだ
「・・早く、大人にならんと、」
ただでさえ恵まれなかった生い立ち、身の安全と引換えに背負った十字架を彼は日々必死に全うしようとしている
「大人はそんなに良いものじゃありませんよ」
「早く力付けて、あいつら見返して、」
「まあまあ、落ち着いて」
彼の好きな炭酸を手渡すと不服そうな目が私を見上げる、と思えば、きらきらと空を映したその瞳が無邪気に細められた
「こんなん飲まん、そっちの方がよか!」
奪い取るように取り上げられた缶コーヒー、黒い缶に大きく「無糖」と書かれたそれをホークスが満足気に見遣る
「今日から俺、これしか飲まんけん」
覚えとってね、得意気な表情に思わず気の抜けた溜息が溢れる
涼しい顔で傾けた缶、口に含むと思い切り引き攣った笑顔を眺めながら、私は手元の炭酸を開けた
「う、うまか」
「もう少し嘘が上手にならないといけませんね」
「・・目良さんまでそういう事言うん」
睨みの圧は大人顔負け、貴方をそんな風にしてしまった事に責任を感じていないと言ったら嘘になる
だから貴方が背負う限り、ほんの少しでもその心が自由に翔べるよう
私もその一端を、貴方の側にいる事で担いたい
「冗談ですよ、急いで大人になんてならなくていい」
口直しにどうぞ、差し出した缶を不本意そうに受け取るその両手がどれだけ血に染まっても
それを洗い、拭うことだけは決してひとりではさせない
汚い大人の自己満足であり偽善、それでも
「・・私は、貴方の事を大切に思っています」
「へへ、知っとる」
目良さんが居ってくれてよかった、年相応の健気で眩しいその顔を護らせて下さいと心の中で誓って
いつかこの広い空を、貴方の正義が照らしますように
気の重い午後の訓練プログラムに思いを馳せながら、私は大きく息を吸い込んだ