第12章 十八番ですから
「やけに焦っているな、ホークス」
何かあったかな、君にとって不都合な何かが、
閉め切った部屋がやけに息苦しい、表情も声の調子も何も問題無いはずなのに
長年の刑事の勘ってやつだろうか、やっぱり貴方も一筋縄では行かないか
「何も無いですよ、自慢したくなっただけです」
俺今めちゃくちゃ幸せなんで、へらりと眉を下げると塚内さんが鞄の紐を強く握った
「・・薬師さんは優しいから」
きっと人助けのつもりで泊まったんだろう、小さく吐かれたその一言に自分の笑顔が引き攣るのが分かる
その一瞬を見逃さなかった彼は満足そうに微笑むと床に視線を落とした
「困っている人を放っておけない」
真を助けた時と同じだよ、何を根拠に塚内さんは彼女をこんなにも信じているのか
俺の知らない所で、昨日あの部屋で何が、
「・・塚内さん、性格変わりました?」
「はは、そうかな」
「こんなに食えない人でしたっけ?」
「君こそ変わったように感じるよ」
えらく頭の中が筒抜けだ、穏やかで大人な微笑み、今度こそと鞄を持ち上げた塚内さんが会釈をして、俺は渋々ドアノブを持つ手に力を込める
「あ、真さんに御礼言っといて下さい」
「・・御礼?」
「あの入浴剤、気持ちよかったです」
ありがとうございました、さすがにこの一言は効いたらしい
不快そうに歪んだその顔に殺意が浮かぶのを見届けて、俺はにっこりと手を振る
廊下を真っ直ぐに進むその背中を見ていられなくてドアを閉め掛けると、エレベーターから降りる目良さんの姿が見えた
「・・確かに痩せたかもしれん」
呟きながら小さく手招きをすると、怪訝な顔つきで会議室に入った彼が静かにドアを閉めた
「目良さん・・俺どうしたら良いか分からん」
「・・塚内警部とご同席でしたか」
「大人って怖か」
「何言ってるんですか、貴方も充分大人だ」
ならなくて良い時期からずっと、懐かしむように少しだけ上がった口元、俺は涙が出そうになるのを堪える
「彼女の事になると貴方は、まるで子供ですが」
「・・っ、」
「貴方を子供に戻せる人は、そうは居ません」
私はそこが気に入っています、ぽんと俺の肩を叩いた目良さんが缶を机に置く
苦くて嫌っていたそれをいつから飲めるようになったのか、俺はもう思い出せなくなっていた