第12章 十八番ですから
「いやぁー、お互い忙しいっすねぇ」
土曜も日曜もあったもんじゃない、合同案件の堅苦しい会議、窓のない窮屈な部屋に態と明るい声を響かせると塚内さんが小さな愛想笑いを返した
「毎度毎度、ご足労すみませんね」
「当然ですよ、会長」
「・・敬語辞めて下さいよ、慣れないなぁ」
「そういう訳にも行かなくてね」
困ったように塚内さんが微笑む、穏やかで一緒に居ると落ち着くとはまさにその通り、絵に描いたような理想の相手、その部分に異論は無い
「休みは取れているのか、ホークス」
会う度に目良さんが痩せていくようだが、トップが働きすぎると下は大変だろう、そう言った彼がパソコンを鞄に仕舞った
なるほど、「たまに意地悪」も納得です
椅子から立ち上がるのを確認し先回りした出口、ドアノブに手を掛けたまま動かない俺を見て塚内さんが不審そうに眉を顰める
「昨日は、妹さん大変でしたね」
良くなりましたか、首を傾げにっこり微笑むと彼が全てを理解したように小さく溜息を吐いた
「ああ、薬師さんが側に居てくれて助かったよ」
偶然出会うなんて縁があるのかもしれないな、応戦する事を決めた様子、彼が鞄を椅子の上に置く
「縁?塚内さん案外ロマンチストなんすね」
「・・たまにはいいだろう」
普段そういう事と縁遠いからね、何を吹っ掛けても大人、いいんです別に俺そっち路線じゃないんで、思い付く限りの悪態を微笑みに乗せる
「昨日の夜、俺めぐさんと約束してたんです」
「・・・」
「でも真さんの件で延期になっちゃいました」
「・・そうか、それは失礼を」
複雑な表情を浮かべた塚内さんが小さくお辞儀をして、態とらしく身振り手振りを交えた俺は戯けた声を出した
「いやいや!むしろ感謝してるんですよ」
おかげでめぐさんと朝まで一緒に居れたんで、声を潜めゆっくり耳打ちすると塚内さんの表情が凍り付く
すみません塚内さん、俺貴方の事好きですけど、彼女だけは譲れない
「色々ありましたけど、結果オーライです」
俺のお願い聞いて泊まってくれたんですよ、優しいでしょう、どんな言葉なら、どんな事実なら塚内さんの心を折る事が出来るだろうか
入り込む隙など微塵もないと、早くそう思わせんと、