第1章 この顔も欲しいです
「以上で、現場での救護体制についての――」
手元の書類に目線を落とすふりをしながら、視界に入る彼女の姿に意識を集中させる
そんな顔もするんですね、一生懸命な姿も可愛いなぁ、溢れ出る邪念を微塵も出さずにぱたりと資料を閉じると進行役が閉会を告げた
各々が会議室を出て行く中、見慣れないスーツ姿の彼女が静かに椅子を引いて
甘い溜息が漏れそうになるのを堪えて、俺もゆっくりと立ち上がった
「あ、ホークス、!」
「おつかれさまでした、めぐさん」
長時間で疲れたでしょう、労わるように腕を回すと興奮冷めやらぬ彼女がきらきらと瞳を輝かせた
「今日は本当に、ありがとう・・!」
「いえいえ、さ、挨拶に行きますよ」
普段浴びる事のない彼女からの尊敬と羨望の眼差しに思わず笑い声が漏れる
こんなに無邪気な一面が見られるなんて、今日は最高の一日だ
「ジーニストさん、長時間ありがとうございました」
「こちらこそ」
非常に有意義な話が聞けた、そう言葉を続けたジーニストさんが俺の横のめぐさんをちらりと見遣った
「雄英高校の薬師先生だね」
現場をよく理解している発言に大いに学ばせてもらった、言いながら差し出された手を彼女が恐る恐る両手で握る
「た、倒れそう、です・・!」
一瞬目を見開いたジーニストさんが全てを理解したように微笑んで、緊張と赤面で震え出しそうな彼女の姿に俺は笑い声を響かせた
「お二人とも、このあと予定あります?」
せっかくですしランチでも、予想通りのリアクション、驚きに口をぱくぱくさせた彼女が信じられないと言うように俺を見つめている
最高の気分です、めぐさん
喜ぶその顔が見たかったのか、はたまた自身の力を彼女に認めさせたかったのか、結果オーライ、そんなに大差無いだろう
滲み出る満足感を隠そうと軽く天井を仰ぐと、スクリーンのスイッチを切った目良さんが耳元で囁いた
「会議後の懇親と理解しますよ」
「その通り」
「今後の協力関係を深めるための」
「もちろん」
領収書に変な名目を書かないように、俺は全く信用されていないらしい、言い聞かせるように呟く目良さんに俺は呆れた溜息で応じた
「分かってますって」