第10章 夜の終わりは朝の始まり
「結婚式いつにします?」
「・・誰にでもそういうこと言ってるんでしょ」
「めぐさんこそ、他の男の家でもやってたりして」
言い返すと驚いたように丸く開いた瞳、びっくりしてないで早く否定して下さいよ、え、まさか本当にやってるんですか、どうせイレイザーやろ、ありえん、思い切り捲し立てる俺を見て彼女が声を出して笑った
「完全にやる気を失いました、今日休みます」
「ふふ!早く食べよ?」
「食べますけど、休みますからね」
ぶつぶつと止まらない恨み言、肩を震わせた彼女がフォークに刺した赤いトマトを俺の口元に近付ける
「はい、あーん」
「うわ、好き」
ぱくりと頬張ると彼女がくすくすと笑う、どこまで振り回す気なんだ貴女は、幸福感と腹立たしさが同時に込み上げて俺は自分の表情が分からなくなった
「休め・・・・ないか」
「ふふ、お忙しいですね会長」
「せめて午前をリモートにでき・・、ないか・・」
土曜とは言えぎっしりと詰まった予定、どれも俺が不在のままでは進められないものばかりだ
「私の事は気にしないで、」
「何言ってんですか、俺のためですよ」
ほっといたらイレイザーの世話焼きに行くかもしれんけん、思い切り睨みつけると彼女が頬を染める
「え、まさか今日会うんですか」
「ち、違うよ、そうじゃなくて・・っ」
妬きもちがちょっと嬉しかっただけ、恥ずかしそうに視線を落とした彼女がぎこちなくカップを手に取って
朝から刺激が強すぎる、愛おしさで爆発してしまいそうだ、帰したくない、帰せるはずがない、彼女は今までよりも明らかに俺を意識しているのに
「・・今夜のひとりは、堪えますね」
帰ってきた時に貴女はもう居ない、言葉にすると夢の終わりが一気に現実味を帯びて、冷めかけているコーヒーを見つめた
「寂しか」
「ホークス・・」
「啓悟、って呼んでください」
目を見て絞り出した声が静かな部屋に響く、懇願するようなそれに彼女が大きく目を見開いた
「貴女が此処で見たのは、隙を見せないホークスじゃない」
油断しきった鷹見啓悟なんです、
ああそうか、他の女性たちとの決定的な違い、
それはそのままの俺で居られるという確信
何の面白味もない、気の利いた事も出来ない、そのままの俺を見て欲しい、愛して欲しいと望んでいるんだ