第8章 ショコラ・エピセ
ガタッと音を立てて俺が立ち上がった瞬間に彼女の目から溢れた一粒、襲い来る罪悪感とそれを僅かに上回る歓喜、自分が今一体どんな顔をしているか全く想像が付かない
「俺のために、選んでくれたんですか」
「もう忘れてくれていいから・・」
「とりあえず土下座します、させてください」
床に膝をつくと慌てた彼女が俺の腕を引っ張り上げる、恥ずかしさと怒りの混じった表情で赤いその唇を思い切り噛み締めて
「あ、触っちゃダメですよ」
「私から触るのはいいの、早く立って・・!」
潤んだその瞳が思い切り俺を非難している、何ですかその理屈、もう耐えられない、可愛すぎる貴女が悪い、腕に触れているその白い手を取り無理やり指を絡ませた
「きゃ・・っ、ホークス!」
「”貴女から”手を繋いでくれるなんて」
感激です、言いながらその華奢な腕を思い切り引き寄せる
バランスを崩した身体はすっぽりと腕の中におさまって、あまりの愛しさに俺は存在を確かめるようにぎゅっと抱きしめた
「転んじゃいました?」
「もう、本当に・・っ!」
「そんなに抱きしめないで下さいよ、照れるなぁ」
閉じ込める腕に力を込めると、彼女が困り果てたように耳まで赤くして
今すぐどろどろに口付けて押し倒して愛して俺のものにしてしまいたい、膨れ上がっていく爆発寸前の想いが暴走しないようにと天井を仰いだ
「・・めぐさんからの贈り物、死ぬほど嬉しいです」
「いいよ、気を遣わなくて」
「分かってるでしょう、塚内さんからだと思ったんですよ」
「女性宛に見えるよね、センスなくてごめんね」
「・・どうやったら機嫌直してくれます?」
ごめんなさい、お願いです、優しい貴女を傷付けた最低な俺に教えて下さい、心の底から真剣に許しを請う声にすらどうしても喜びが滲んでしまう
「・・ホークスのこと想いながら、選んだのにな」
躊躇うように発された言葉はひたすらに甘くて柔らかい棘、貴女がこの腕を解かないのはただの無防備、それとも俺への信頼、そのどちらでも無いことを切実に願ってしまう
「聞かせて下さい、もっと」
「元気になってほしくて、悩んで、」
この髪を指で梳いたらどんなに満たされるだろう、背中から腰に手を這わせて貴女の形を感じたらどんなに、気を抜くと滑り出してしまいそうな手はちゃんと握っておかんとね