第8章 ショコラ・エピセ
添えられた色とりどりの果実、コンビニスイーツがあっという間に豪華な一皿に変わって彼女が満足そうな笑みを浮かべた
「さっすが三つ星シェフ!」
「ふふ、いっぱい褒めてくれるから」
気分が良くなってきちゃった、けらけらと笑った彼女が俺の皿にまた一つ赤い苺を乗せる
「こんなに美味しそうなのになぁ、」
食べないまま回収されちゃうなんて、俺が普段開けることのない野菜室を悲しげに見つめる彼女に苦笑しながら、俺はコーヒーマシンのスイッチを押した
「・・じゃあまた、作りに来て下さい」
合鍵渡します、指紋登録でもいいですよ、覗き込んで見つめると呆れたように彼女が片眉を吊り上げる
紛れ込ませた紛れもない本心、甘くてもどかしいそれがミルクと一緒にゆっくりとカップに溶けていった
「あ、」
フォークに刺した黄色を口元に運びかけた彼女が、何かを思い出した様子で立ち上がる
部屋の隅に置かれた鞄の中から小さな包みを取り出すと、恐る恐るそれをテーブルに置いた
「これ、ね」
ラッピングされた小さな箱、上品なリボンを解いて蓋を開けると数粒のチョコレートが並んでいる
「うわ、いいやつですねコレ」
透明な袋の中にはもうひとつ、シンプルな瓶に氷砂糖のような粒が入っている
瓶の栓を抜くと、高級ホテルのアメニティのような洗練された香りが部屋に広がった
「入浴剤ですか?」
「うん、香りが良くて疲れが取れるらしくて・・」
「・・ふーん」
テーブルに肘をつきながらフォークで苺とオレンジとパイナップルを纏めて串刺しにする
貴女は何のために俺にこれを見せるんですか、さっきの紙袋が塚内さんの妹さんからなら、こっちは間違いなく、
「塚内さんに貰ったんですか、相変わらず当たり障りないなぁ」
「え」
数秒固まった彼女がふるふると震えて、凄まじい速さで二つの贈り物を包みに仕舞っていく
何事も無かったかのように鞄にそれを隠し終えると、羞恥に耐えるようにその唇が固く結ばれて
「めぐ、さん?」
「・・・」
「え、あ、俺何かまずい事しました・・?」
赤く潤んだ目元がおろおろと視線を迷わせている、椅子に座り直した彼女が気を取り直すように苺を口へ運んだ
「当たり障りないよね、ごめんね」
「え」
「何を渡したらいいか、分からなくて」
「え、・・ま、さか」