第7章 埋め合わせは何でも
問い詰めるような冷たい声、氷のようなその音に彼女が大きく目を見開いて
だらりと力なく下ろしたスマホ、言葉を失っているその姿が更に俺を苛つかせた
「ひどい人だ」
「な、ホークス、どうして・・!」
「見られちゃまずい事でもありました?」
楽しそうでしたもんね、思い切り睨み付けてやりたいのに、酷く困惑したその顔を見たら途端に言葉が上手く出せなくなって
なんで貴女が傷付いた顔してんですか、大きく開いた目にうっすら浮かんだ涙が俺の胸を抉るように傷付けていく
「さ、がして、くれたの・・?」
「勝手に探して、勝手に待ってました、すみません」
塚内さんとお楽しみとは知らなかったんで、言葉にするとあの情景がありありと思い出されて、震える拳を俺は思い切り握った
「違うの、そんなんじゃ・・!」
「やめて下さい、聞きたくない」
「ホークス、・・っ」
傷付けて、待たせて、ごめんなさい、ぽろぽろと溢れた涙がその頬に跡を付ける
泣くなんて卑怯だ、謝罪なんか聞きたくない、そんな苛立ちすら、泣かせたくない想いに飲み込まれてしまう
「ちが、本当に・・っ、ごめ、」
「・・・頼むから、泣かんで」
これ以上は、心が壊れそうだ、勝手に好きになって勝手に傷付いて、貴女を泣かせてしまった
情けなさと罪悪感が込み上げる、このまま跡形もなく消えてしまいたい、そう足元に視線を落とした瞬間、温かい手のひらが頬に触れた
「そんな顔させて・・っ、ごめんなさい」
「、・・っ」
「怒っていいから、泣かないで・・!」
細い親指がそっと俺の目尻を拭うと冷たい空気がそこを冷たくする、あまりに優しい彼女の指先に俺は必死で奥歯を噛んだ
「めぐさん、俺、死にそうなくらい辛い」
「うん」
「塚内さんと居ったけん」
「うん」
「俺ずっと待っとったのに」
「うん」
必死に頷く彼女の瞳から宝石のように綺麗な一粒が落ちる
思い切り抱き寄せて腕に力を込めると、驚きに言葉を失った彼女の肌が桃色に染まった
「・・埋め合わせ、何でもいいんでしたよね」
「え、あ、あの、わたし・・っ、」
上がる体温とは裏腹にどこまでも頭が冴えていく感覚、自身を落ち着かせるように大きく息を吐くと腕の中の彼女がおろおろと身じろぎをした
「・・これから朝まで、一緒に居てくれますか」