第1章 この顔も欲しいです
「送りますって」
「ううん、今日は買い物して帰るから大丈夫だよ」
「んじゃタクシー替わりに使ってくださいよ」
来客用スリッパがぱたぱたと私の周りに音を響かせて、身振り手振りに合わせて高級そうなスーツが視界に入る
もうそこには無い赤い羽の音まで聞こえてきそうで、私は可笑しくて眉を下げた
「戻らなくていいんですか、鷹見会長」
「突き放した言い方だなぁ、泣きますよ?」
「ふふっ、上鳴くんみたい」
そろそろハンドクリームも買った方がいいかも、そんな事を考えながら私は少し荒れ始めた手の甲を見つめる
ついこの間まで西陽が差し込んでいたこの時刻も今では薄暗く感じて
「聞き捨てならないなぁ、チャージズマが何です?」
「あ、!塚内さん!」
肌寒そうに薄いコートを押さえた塚内さんがガラス戸を引くと、下駄箱に冷たい風が吹き込む
私を見て会釈をした彼は、丁寧な手つきで帽子を取ると穏やかに微笑んだ
「どうも、薬師さん」
言いながら隣にいるホークスを見遣った彼が驚いたように目を丸くして、少しだけしっかりとお辞儀をする
「こんな時間から雄英に、?」
「ええ、教頭先生に少しだけ呼ばれまして」
「いやー大変すね、頭が下がります」
茶化すように言葉をかけたホークスに苦笑した塚内さんが、コートを畳みながら来客用スリッパの入る下駄箱に手を伸ばす
「貴方に比べれば大抵の人間は暇ですよ、ホークス」
困ったように笑いかけた彼が、揃えた靴を丁寧に下駄箱へと運んで
私を見下ろして突然何かを思い出したように鞄の中を漁り始めた
「これ、貰い物なんですが」
取り出されたのは上品な桃色の包み紙、入浴剤が有名なブランドの名前がリボンに印字されている
「各所を回るとたまに頂くんですが、私にはちょっと」
ご迷惑じゃなければ貰って頂けると助かります、他に渡す人も居ないので、気まずそうに視線を落とした彼が私の手にそれをそっと置いた
「いいんですか、?嬉しい・・!」
「女性に入浴剤ねぇ」
「いや、決して、変な意味では・・!」
今晩お風呂で使わせていただきますね、私がそう言うとホークスが思い切り眉を釣り上げて、塚内さんはなぜかおろおろと下を向いた