第5章 貴女はそういう人だから
「今、駅前の駐車場に着いたところです」
そっちは落ち着きました?、その明るい声色に罪悪感が込み上げる、言葉を選ぶように一瞬黙ると彼が心配そうに声を出した
「めぐさん?」
「本当に、ごめんなさい・・!」
家に着いたところで彼女が倒れてしまったこと、目覚めるまで、せめて同居人が帰宅するまで側に居たいこと、ぽつりぽつりと言葉を選ぶ私に、彼は優しく相槌を打つ
「・・わかりました、付いててあげて下さい」
「本当に、ごめ・・っ」
「俺のことは気にせんで大丈夫です」
それにめぐさんが謝ることじゃないでしょう、残念ですけどまた来週以降に調整しましょ、変わらず明るい声が耳元に響いて私は鼻の奥がつんとした
「今日は、ホークスを元気にしたかったのに」
「・・っ、優しいんだから」
「絶対、絶対、埋め合わせさせてね」
何でも欲しいものとか、買っていくし、もちろん次回は私の奢りだよ、そう必死に言葉を続ける私に彼が笑いを溢す
「何でも?いいのかなぁそんな事言っちゃって」
楽しみが増えて得した気分です、戯けた声音に胸がじわりと温かくなる
やっぱり靴下も買って渡そう、申し訳無さに滲む視界を空に向けると、夕闇の中に沢山の星が光っていた
「・・本音で、怒ってくれてもいいのに」
優しいね、小さく続けた私に彼が数秒言葉を無くす
少しだけ吐かれた短い溜息、躊躇うような声が耳元で響いた
「・・会いたかったですよ、そりゃもう」
「うん」
「何も出来んくらい、楽しみでした」
「・・うん」
でも、そう続けた彼が今度は長い長い溜息を吐く
呆れたようなその声に私への信頼と励ましが滲んで、私は唇を噛んだ
「困っている人を放っとけない、そんな貴女が好きです」
「・・っ、」
いつもの冗談だと分かっている、それなのに、耳元で優しく響いた彼の声に心臓が大きな音を立てて
早まる鼓動、熱を持った頬が、熱い
「・・っ、ありがとう」
「その人助け終わったら、次こそ俺の番で頼みますよ」
「うん・・!」
またすぐに連絡させてね、そう言って切った数分間の通話、暗くなった画面を私はぼんやりと握りしめる
星の瞬く空にそよそよと涼しい風が吹いて、薄い雲が流れると透き通るように明るい月が顔を出した