第5章 貴女はそういう人だから
めぐさん無事ですか、数分前に届いていたメッセージに慌てて笑顔のスタンプを返す
心配をかけてしまったこと、後でしっかり謝ろう、鞄の中に隠した小さな包みに目を遣って
「そろそろ俺も出ます、ゆっくり来て下さいね」
こちらを気遣う優しいメッセージ、そしてそれとはかなり雰囲気の異なるエンデヴァーのスタンプに思わず笑い声が出た
「あれ・・?」
そう言えばあまり物音がしない、
数分経っても真さんが出て来ないことにようやく気付き、嫌な予感がした私は恐る恐る目の前のドアノブを引く
「・・っ!、まことさん!」
廊下の先に見えたリビング、紺色のパンツスーツの裾が床に広がっているのがちらりと覗いて
思い切り息を飲んだ私は大急ぎでパンプスを脱ぎ捨てると部屋の中へと駆け込んだ
「まことさん・・っ、大丈夫ですか、!」
血の気の無い顔、閉じられた瞼に綺麗なラメが光っている
慌てて額に手を添えると頭に流れ込む情報、寝不足と貧血から来る目眩には違いないことを確認して私はソファへと彼女を運び寝かせた
「う・・、すみま、・・せん」
「いいから目を閉じていて」
大丈夫だから、優しく微笑むとほっとしたように彼女が目を閉じる
片付けられたリビングを見渡すとテーブルの上に置かれた暖房のスイッチ、
それを急いでオンにすると、私は毛布を探すために立ち上がった
二つある部屋のうち近い方のドアを開くと明らかにそこは男性の部屋、開けっぱなしのクローゼットにスーツやワイシャツが掛かっている
思い切ってもうひとつの部屋を覗くと広がった女性らしい雰囲気に、私はそっと足を踏み入れる
ベッドの上に畳まれていたブランケットを手に、リビングの彼女の元へと戻った
よほど疲れているのだろう、ソファの上の彼女は穏やかな寝息を立てている
さすがに勝手にキッチンに立つのは気が引けるし、でも鍵を掛けずに帰るわけにもいかない、
———いくらでも遅れて来てください、
同居している相手が帰宅するまで、せめて彼女が目を覚ますまで、
そうこうしている内に、何時間も彼を待たせてしまう事になるかもしれない、
静かに閉めたリビングのドア、私は鞄からスマホを取り出すとメッセージ画面を開く
「本当にごめんなさい、今日、」
そう打ちかけて、私は靴を履きながら通話ボタンを押した