第5章 貴女はそういう人だから
混み合う大通り、乗り込んだタクシーがゆっくりと駅前を進んでいく
先ほどまで青白かった女性の顔色は、少しずつだけれど落ち着き始めているように見える
「本当にすみません・・、お恥ずかしい」
「いえ、お会いできてよかったです」
安心させるように微笑むと、彼女が人懐っこい笑みを浮かべた
「、私、まことって言います」
真実の真でまことです、魅力的な大きな瞳が私を見てにっこりと細められる
きっと歳も近いだろう、まだ辛そうではあるものの、彼女の笑顔が見られて私はほっと胸を撫で下ろした
「めぐです、高校で保健医をしています」
「うわ、天職って感じ・・!」
出会ったばかりなのにすみません、慌てて視線を落とした彼女に思わず笑みが溢れる、渋滞を抜けたタクシーが少しずつ速度を上げて
「まともに寝ていないのは、お仕事で?」
「うん・・今週ちょっと徹夜続きで、、」
「それはだめですね、!」
私がぴくりと眉を上げると、真さんが困ったように微笑む
会ったばかりなのに不思議と話しやすい、学生時代に出会って居たならきっと仲良くなっていただろう、
偶然の出会いに心があたたかくなるのを感じながら、私は住宅街へと変わっていく景色を見つめた
「本当に、ありがとうございました」
もう大丈夫です、そう話す真さんを制して荷物を玄関先へと運ぶ
よかったら上がって行きませんか?、ありがたいお誘いをやんわり遠慮すると彼女が青白い顔に無理やり笑顔を作った
「残念、もっと話したかったです」
「同性とは言え、会ったばかりの人間を家の中に入れちゃダメですよ」
「あら、会ったばかりの人間の家に着いてくるのも同じくらい危険でしょ?」
ここに大勢の悪人が待ち構えていたらどうするんです?、お茶目に笑った彼女の目がエメラルド色にきらりと光る
「・・たしかに」
「あはは!めぐさんって可愛い人ね」
少しだけ待ってて下さい、何かお礼に渡せるもの探してくるから、
頼もしい笑みとは違いまだおぼつかない足元、よろりと踏み出した彼女がヒールを脱ぎ捨てて
パタンと音を立てて閉じたドアの前で、私は苦笑を漏らした