第5章 貴女はそういう人だから
血の気のないその頬にそっと触れる、驚いたように目を開いた女性を安心させるように言葉を選んで
「私の個性、処方なんです」
体調不良の原因がわかるかもしれません、そう言葉を続けるや否や、流れ込んできた彼女の健康状態、足りない栄養素、精神的不安要素、
しかし何よりも、
「・・まともに寝ていない、ですね?」
「は、はい・・」
呆れた溜息が思わずこぼれる、綺麗なその身なりから考えるととても忙しいお仕事をしているのかもしれない
「貧血も重なっています」
出血量も多く、お腹も痛いでしょう?、鞄の中から素早く鎮痛剤を取り出すと彼女が気まずそうに目を伏せた
「すごい、わかっちゃうんですね」
「踏み込んでしまってすみません、でも」
とりあえずこれ飲んで下さい、ペットボトルの蓋を開けてお水を手渡すと彼女が申し訳無さそうに鎮痛剤を口に入れた
「貧血もあるので電車は危ないです、タクシーで帰ることはできますか?」
「はい、そう、します・・」
よろりと立ち上がった彼女が辛そうに椅子の背もたれに手をかけて、下に置かれた大きな鞄を掴んだ私は迷いなく彼女の背中を支える
エレベーターを幾つか使ってやっと辿り着いた地上、タクシー乗り場の前まで行くと彼女が深々と頭を下げた
「本当にすみません、助かりました・・」
「いえいえ、気をつけて帰って下さいね!」
「はい・・、荷物もありがとうございました」
差し出された手に鞄の紐を掛けると、ガクンとその足元が崩れて
額に浮かぶ冷や汗が彼女の辛さを物語っている
お節介はヒーローの本質、いつかの教頭先生の言葉が思い出されて、私は意を決して口を開いた
「ご迷惑じゃなければ、お家まで送ります」
「え、・・っ」
「お一人だと不安でしょう、ご不快じゃなければ」
心底驚いた彼女が泣きそうな顔をして眉を下げる、小さく聞こえたお礼の言葉に私の胸は喜びでいっぱいになった