第2章 流し込んで消して
ここ数日ですっかり冷たくなった夜風、賑やかな通りを歩きながら歩幅を合わせる
電車の時刻を調べるのだろう、鞄からスマホを取り出した彼女が手元の画面を確認した
「よければ、家まで送らせて下さい」
「いえ、!まだそんなに遅くないですから」
これ以上お手間をおかけするわけにはいきません、茶化すように目を細めた彼女が風に靡く髪を優しく押さえる
「・・まだ話していたい、そう言った方がいいでしょうか」
思いのほか堅くなってしまった声色、ちらりと彼女の方を見遣ると、流れた髪の隙間から赤い耳が覗いた
「か、揶揄わないでください・・」
どの口がそれを、思わず溢れた笑いに彼女がうっすらと眉を顰める
そんな顔もするのか、込み上げる想いが言葉となって滑り出た
「おかしいな、お酒は飲んでいないはずですが」
「・・塚内さん、そんな意地悪も言うんですね」
「意地悪か、生まれて初めて言われましたよ」
肩の力が抜け笑いを溢すと、彼女が困ったように顔を顰めて
ああ帰したくない、俺は少しずつ歩くスピードを落としていく
駅と駐車場の分かれ道、自然と歩みをリードして路地の方へと足を向けた瞬間、背後から聞き慣れた声が響いた
「いやぁビックリ!こんな所で会うなんて!」
珍しい組合せっすねぇ、その髪色と同じように明るい声が静かな路地に響いて
言葉を失う俺の横で、目を見開いた彼女が驚きに声を上げた
「え、すごい、偶然!?」
「グーゼングーゼン!驚きましたよ」
退屈なしがらみパーティーの帰りなんす、へらりと挙げられたその手で車のキーが音を立てる
「塚内さん、今朝ぶりですね」
「・・ええ、おつかれさまです」
「めぐさん、もう帰るところでしょう?」
驚きの余韻が残る彼女が小さく頷くと深まったその笑み、まるで決まっていたかのように彼女の荷物を優しく取り上げる
「明日も早いですもんね、俺が送ります」
「え、大丈夫、まだそんなに遅くな・・」
「言ったでしょ、退屈なパーティーの帰りなんです」
今日はひとつも良いことがなくて、態とらしく口を歪めたホークスが覗き込むように彼女に目線を合わせる
「でもめぐさんと帰れるんで、全部チャラです」
むしろお釣りが来るくらい、場違いな明るい声と小さく響いた彼女の笑い声が、俺の胸を酷く騒つかせた