第2章 流し込んで消して
「大当たりじゃないですか、塚内さん・・!」
色彩豊かな前菜に目を輝かせた彼女が嬉しそうに俺に微笑みかける
外の暗闇が明るい店内との対比を強めて、窓硝子に映る画をどうしても意識してしまう
はたから見ればそういう関係に見えるに違いない、そう思うだけでじわりと生まれた優越感、色付いた口元に運ばれる銀色がきらりと明かりを反射した
「そういえば、前にお勧めして下さった本読みました」
「え、本当ですか?」
「塚内さんよりずっと時間がありますから」
仕事の話、同僚の話、当たり障りのない数々の話題が優しいグラデーションを描きながら互いを交わらせていく
流れていく時間が心地よくて、終わってほしくなくて、態とゆっくりと食べ進めている自身に気が付いた
「とても素敵な結末でしたね」
心が温かくなるような、グラスを運びながら彼女がにっこりと微笑んで、柔らかなその視線から逃げない事を俺は意識する
「・・参りました」
「え?」
「いえ、此方の話です」
浅く溜息を吐いて苦笑すると、彼女が可笑しそうに首を傾げる
季節を感じさせるデザートがテーブルに運ばれるとその目が一層輝いた
「そうだ、オールマイトに聞いたんですが、」
紅茶がお好きだと伺ったので、小さな紙袋を差し出すと驚いた様子の彼女がぱちぱちと瞬きをして
お口に合うかわかりませんが、そう言いかけた口を俺は静かに噤む
予防線を張って何になる、彼女の中に少しでも自身の存在を残したいんだろう
「薬師さんの事を想いながら、選びました」
「え、・・っ、嬉しいです・・」
お忙しいのにまたお手間かけちゃいましたね、
照れ臭そうに視線を落とした彼女が誤魔化すようにスプーンを口へ運んで
ほんのりと赤くなったその頬、今夜のコースにアルコールは含まれていない
「・・私も今度、何かお返ししなくちゃ」
「決してそんなつもりでは・・、あ、いや、」
やっぱり、楽しみにしておきます、みっともなく言い直すと彼女がふわりと微笑む
くすくすと笑うその声をずっと聞いていたくて、既に溶けかけている甘いクリーム色を俺はほんの少しだけ掬った