第16章 雄英文化祭編
「……ママ!」
双子の一人が、廊下の端に立つ女性へ向かって声を上げた。
その声に気づいた女性は、こちらを振り返る。そして、子どもたちの姿を見つけると、ほっとしたように目元を和らげた。
ゆっくりと、こちらへ歩いてくる。
その歩き方は、まるでランウェイを歩くモデルのようだった。
真っすぐに伸びた長い金髪が、歩くたびに光を受けてきらきらと揺れる。身にまとった衣服は上質なブランドで統一され、耳元には品のあるピアス、首元には繊細なネックレス。指先にも美しいアクセサリーが光っていた。
華やかなメイクに、隙のない立ち居振る舞い。
ただ歩いているだけなのに、彼女の周囲だけが別世界のように感じられる。
「……すっげぇ美人」
上鳴が、思わずぽつりと呟いた。
切島も目を丸くしている。
「なんつーか……芸能人みてぇだな」
「……モデルか何かか?」
爆豪でさえ、思わず目を奪われていた。
そして、おもちは女性の顔を見た瞬間、大きく目を見開いた。
美しい。
そう形容するのが最もふさわしい女性だった。
けれど、彼女の美しさは、ただ整った顔立ちだけではない。人の視線を自然に集める華やかさと、余裕を感じさせる佇まい。そのすべてが、ひとつの完成された存在感を生み出していた。
女性は子どもたちの前まで来ると、まず三人の頭を順番に撫でた。
「もう……びっくりしたわ。みんな、どこに行っちゃったのかと思ったじゃない」
優しく、少しだけ困ったような声。
三人の少年たちは、途端に安心したような表情を浮かべた。
それから女性は、おもちたちへ向き直った。
「うちの子たちがはぐれてしまったみたいで、助けて頂きありがとうございました」
そう言って、柔らかく微笑む。
――その瞬間。
「…………」
誰も、すぐには言葉を返せなかった。
ただ微笑んだだけ。
それなのに、まるで時間が止まったかのように、その場にいた全員が動きを止めてしまった。