第16章 雄英文化祭編
上鳴は口を開けたまま固まり、切島は目を見張る。エリもぽかんと女性を見上げていた。
爆豪に至っては、眉間に皺を寄せたまま、なぜか視線を逸らすこともできずにいる。
そしておもちも、ほんの一瞬、言葉を失っていた。
「……いえ。みんな、いい子たち…でしたから」
やがて我に返り、穏やかに微笑み返す。
「お母さんが見つかってよかったです。ちょうど迷子センターへ連れて行こうと思っていたところだったんですよ」
「まあ……そうだったんですね。本当にありがとうございます」
女性はもう一度、優雅に頭を下げた。
そして、おもちの腕の中にいた赤ん坊へと視線を落とす。
「さあ、おいで」
両腕を差し出すと、赤ん坊は待っていましたとばかりに小さな手を伸ばした。
女性は慣れた手つきで赤ん坊を抱き上げ、胸元へそっと引き寄せる。
「ずいぶんと嬉しそうな顔ね。おねえちゃんたちにたくさん遊んでもらえたのかしら?」
赤ん坊の頬を指先で優しく撫でながら、女性は目を細めた。
すると、赤ん坊は母親の顔をじっと見つめ、何かを伝えようとするように口を動かした。
「まんま、ぱ、ぱ!」
小さな手をぱたぱたと動かしながら、一生懸命に声を上げる。
「あらあら。おしゃべりが上手になったわね」
女性は嬉しそうに笑い、赤ん坊の額へ軽く口づけた。
その光景を見ていたおもちは、自然と表情を和らげた。
「ふふ、ずっとご機嫌でしたよ。おむつも替えたので、きっとすっきりしたんでしょうね」
「まあ、そこまでしていただいたんですか?」
「いえ、たいしたことではありませんから」
そう答えるおもちに、女性は感謝を込めた眼差しを向けた。
「あなた、とてもお優しいのね」
「……そんなことは」
不意に褒められ、おもちは少しだけ照れたように笑う。
その横で、爆豪は腕を組んだまま、女性と子どもたちを交互に見ていた。
やはり、何かがおかしい。
あの三人は、どう見ても自分によく似ている。
そして、赤ん坊の青い瞳は、隣にいるおもちを思わせるほど澄んでいた。