第16章 雄英文化祭編
やがて、胸元の赤ん坊をそっと支え直し、こくりと頷く。
「……分かった」
「いい子ね」
おもちは微笑み、今度は双子にも目を向けた。
「あなたたちも、それでいい?」
「うん!」
「ママに会える?」
「ええ。きっと会えるわ」
そう答えると、双子は少しだけ安心したように顔を見合わせた。
そのとき、エリがそっとおもちの袖を引いた。
「お姉ちゃん……」
「どうしたの、エリちゃん?」
エリは三人を見つめながら、少し不思議そうに呟いた。
「このお兄ちゃんたち、爆豪お兄ちゃんに似てるね」
「……っ」
おもちは、危うく言葉を詰まらせた。
確かに、似ているどころではない。
顔立ちだけなら、親戚だと言われても納得してしまいそうなほどだ。
しかし、まさか本人の幼い頃にそっくりな子どもが三人もいるなんて。
しかも、赤ん坊は自分にそっくり。
――落ち着いて。まずは、この子たちを無事に保護者のところへ送り届けること。
公安で培った思考が、反射的に働く。
目の前の状況を整理し、可能性を考え、必要な行動を選ぶ。
けれど、どれだけ冷静に考えても、目の前の光景には説明のつかない部分が多すぎた。
「……そうね」
おもちは、エリにだけ聞こえるくらいの小さな声で答えた。
「とってもよく似ているわね」
その言葉に、五歳ほどの男の子が、ぴくりと反応した。
双子も、なぜかそろって口をつぐむ。
まるで、何かを必死に我慢しているようだった。
おもちは気づかないふりをした。
「さあ、行きましょう。赤ちゃんもいるから、ゆっくり歩こうね」
「……うん」
男の子は慎重に頷いた。
おもちはエリと手をつなぎ、三人の子どもたちを引き連れて、校舎へと向かった。
その道中、双子は時折、おもちの顔をじっと見上げていた。
何か言いたそうにしては、すぐに口を閉じる。
五歳ほどの男の子も、赤ん坊を抱き直すたびに、ちらりと彼女の横顔を窺っていた。
その視線には、どこか懐かしさにも似た、不思議な感情が宿っている。
けれど、彼らは何も言わない。
言ってはいけないと、固く約束しているかのように。
一方のおもちは、赤ん坊が苦しくないように気を配りながら、五歳ほどの男の子に声をかけた。