第16章 雄英文化祭編
その後、クラスメイトたちは片付けを終え、各々、文化祭の野外で行われる出し物への参加を急いでいた。
廊下には他のクラスの出し物を楽しんできた生徒たちが行き交い、窓の外からは、別の会場で上がる歓声が聞こえてくる。
そんな賑やかな空気の中、おもちはエリの手を引いて歩いていた。
「お姉ちゃん、今日ね、ずっと一緒にいられる?」
エリがそっと尋ねる。
おもちは、すぐには答えなかった。
彼女には、まだ話せないことがある。
これから先、必ずしもエリのそばにいられるとは限らない。自分の仕事も、背負っている秘密も、何一つなくなったわけではないのだから。
けれど。
今、この瞬間まで、偽りにする必要はない。
彼女は足を止め、エリの前にしゃがみ込んだ。
「今日は、できるだけ一緒にいようね」
そう言って、小さな手を優しく握る。
「まだ、見たいところがたくさんあるでしょう?」
エリの瞳が輝いた。
「うん!」
「じゃあ、次はどこに行きたい?」
「えっとね……お姉ちゃんと一緒なら、どこでもいい!」
あまりにも真っ直ぐな答えに、おもちは一瞬だけ目を見開いた。
それから、ふっと笑った。
「……そっか」
エリの額に、そっと唇を寄せる。
「じゃあ、今日はエリちゃんの行きたいところへ、たくさん行こうね」
「うんっ!」
弾けるような笑顔。
その笑顔を見た瞬間、おもちの胸の奥に、あのステージで感じたものと同じ温かさが広がった。
誰かを守ることだけが、自分の役目ではないのかもしれない。
誰かと一緒に笑うこと。
誰かの喜びを、自分の喜びとして感じること。
そんな当たり前の時間も、きっと大切なのだ。
「おもち」
背後から、低い声がした。
振り返ると、爆豪が立っていた。
「もう戻んぞ。いつまでもここで突っ立ってんじゃねえ」
「ええ、今行くわ」
おもちが立ち上がると、爆豪の視線が一瞬だけエリへ向いた。
「……おい、チビ。まだ見てえもんがあんなら、さっさと言え。こいつ、いつまでもお前に付き合ってそうだからな」
「えっ?」
エリがきょとんとする。