第16章 雄英文化祭編
そのとき。
おもちの歌声が、再び高く舞い上がった。
会場の熱気が、最高潮に達する。
彼女自身も、その盛り上がりを肌で感じていた。
歓声。
手拍子。
仲間たちの奏でる音。
そして、エリの心から楽しそうな笑顔。
すべてが混ざり合い、身体の奥から熱が湧き上がってくる。
もっと歌いたい。
もっと、この場にいる人たちを楽しませたい。
もっと、この瞬間を味わっていたい。
そんな気持ちが、自然と喉の奥を震わせた。
次のフレーズへ向けて、彼女は息を吸い込む。
そして。
思い切り声を解き放った。
「――――♪」
高く。
鋭く。
透き通るように伸びていく音。
それは、これまでの歌声とは明らかに違っていた。
まるで、空気そのものを切り裂くような、突き抜ける高音。
人間の声とは思えないほど澄んだ響きが、会場の天井へと駆け上がっていく。
ホイッスルボイス。
彼女自身、狙って出したわけではなかった。
ただ、気持ちが高まって。
音楽に夢中になって。
もっと高く、もっと自由に声を響かせたいと願った、その瞬間。
声が、そこまで届いてしまったのだ。
「…………え?」
音を出し終えたおもち自身が、わずかに目を見開いた。
――今の、私?
ほんの一瞬、歌いながらも驚きが顔に滲む。
けれど、演奏は止まらない。
彼女はすぐに気持ちを切り替え、最後まで歌い切る。
その声が消えた瞬間、会場は一拍、静まり返った。
誰もが息を呑んでいた。
そして、次の瞬間。
「うわああああああああっ!!」
地鳴りのような歓声が、会場を揺らした。
拍手が響き渡り、観客たちが立ち上がる。
「今の何!?ホイッスルボイス!?」
「すごすぎる!!」
「鳥肌やばい!!」
「もう一回!もう一回聴きたい!!」