第16章 雄英文化祭編
ただ、ダークシャドウだけがひょこりと顔を出し、エリとおもちを見つめる。
「へー、あの二人、かわいいな!」
「ダークシャドウ、静かにしろ」
「わかったよ!」
その素直な返事に、何人かが危うく吹き出しかけた。
「……で、でもさ」
今まで黙っていた青山が、胸元に手を添えながら口を開いた。
「眠っている彼女の微笑み……まるで、星空の下で見る宝石のように美しいね。そう、まさに……」
「青山、声がでかい」
「……ウィ。ごめんよ」
すぐさま耳郎に制され、青山はしゅんと肩を落とした。
その様子を見て、蛙吹がくすりと笑う。
「みんな、おもちちゃんのことが好きなのね。ケロ」
「そりゃ、まあ……」
切島は頭を掻いた。
「最初は、なんか近寄りがたい人だと思ってたけどよ。今は、もっといろんな顔を見てみたいって思うぜ」
その言葉に、麗日も頷いた。
「うん。私も。いつも頼りになるし、すごく大人っぽいけど……こうやって眠ってるところを見ると、なんだか普通の女の子なんだなって思う」
「……そうだね」
耳郎は、ふっと目を細めた。
「普段、あんまり自分の弱いところを見せないからさ。こういう姿を見ると、ちゃんと休める場所があってよかったなって思う」
その声には、からかいではない、純粋な気遣いが込められていた。
そして、その言葉を聞いていた緑谷は、静かに彼女を見つめていた。
彼は知っている。
彼女がどれだけのものを抱えてきたのか。
どれだけ危険な場所に身を置き、どれだけ多くのことをひとりで判断してきたのか。
そして、そんな自分の過去を打ち明けたあとでさえ、彼女がいつもどおりに笑おうとしていたことも。
今、彼女は眠っている。
エリを抱きしめながら、誰にも警戒することなく。
その光景を見ていると、緑谷の胸がじんわりと温かくなった。
――よかった。
彼女が、こうして安心して眠れる時間があって。
誰かに頼られて、誰かを守るだけじゃなく。
彼女自身も、誰かのそばで休めるのなら。