第16章 雄英文化祭編
エリがおもちと再会してからというもの、雄英高校の一角には、なんとも微笑ましい光景が広がっていた。
「じゃあ、次は校舎の中を案内しようか!」
通形が明るい声でそう言い、エリの手を取る。
「ここが一年生の教室があるところで、あっちが食堂!それから、トレーニング施設もあるんだよ!」
身振り手振りを交えながら説明する通形に、エリはこくこくと頷いていた。
けれど、彼女の視線は、説明を聞いている間も何度となく背後へ向けられていた。
そこにいるのは、おもち。
バンド練習へ戻ろうとしていた彼女が、耳郎と何か話している。
エリはその姿を確認すると、きゅっと通形の手を握った。
「ミリオお兄ちゃん……」
「ん?どうしたんだい?」
「……あっちに、行きたい」
小さな指が示した先には、もちろんおもちがいた。
通形は一瞬、きょとんとした。
「えっ、また?さっきも一緒にいたじゃないか!」
「……うん」
「ほかにも、いろいろ見て回ろうよ!せっかく雄英に来たんだからさ!」
「……でも」
エリは困ったように俯いた。
それから、ちらりとおもちを見上げる。
「……おねえちゃんと、一緒がいい」
その一言に、通形は思わず言葉を失った。
先ほどから、どうにも様子がおかしいとは思っていたのだ。
初めて訪れた雄英高校。大勢の生徒たち。慣れない環境に緊張していたエリが、おもちの姿を見つけた途端、驚くほど自然に笑った。
それだけではない。
おもちが少し離れれば、そちらを目で追う。
彼女が移動すれば、エリもついていこうとする。
そして今も、通形の手を握りながら、意識はすっかり別の場所に向いていた。
「……あれぇ?」
通形は首を傾げた。
「エリちゃん、もしかして、あのお姉さんのことが大好きなのかな?」
「……うん」
迷いのない返事だった。
「そっかぁ……!」
通形は嬉しそうに笑った。
エリが誰かに懐き、自分から一緒にいたいと伝えられるようになった。
それは、彼女が少しずつ前へ進んでいる証拠でもある。
けれど、ひとつだけ気になることがあった。