第16章 雄英文化祭編
文化祭に壊理を招待できないか。彼女が少しでも楽しい時間を過ごせるように、何か機会を作れないか。
話を聞き終えた相澤は、すぐには返事をしなかった。
視線の先には、緑谷の話をじっと聞いている壊理がいた。
まだ笑顔はない。
けれど、先ほどまで俯いていた顔が、ほんの少しだけ上がっている。
相澤はその変化を見逃さなかった。
「……悪くない考えかもしれないな」
「本当ですか?」
「ただし、俺の判断だけで決められることじゃない。安全面も含めて、校長に相談する必要がある」
「はい!」
「招待できるかどうかは、まだわからないぞ」
「それでも、お願いします!」
緑谷が頭を下げると、相澤は小さく息を吐いた。
「わかった。こちらから話を通してみる」
その言葉を聞いた壊理は、目を丸くした。
「……わたし、行けるかもしれないの?」
「まだ決まったわけじゃない。だが、可能性はある」
相澤の言葉に、壊理は小さく頷いた。
そして、ほんの少しだけ。
本当に、注意して見ていなければ気づかないほどわずかに、表情が明るくなった。
それを見た緑谷の胸が、じんわりと温かくなる。
たったそれだけの変化が、どうしようもなく嬉しかった。
「よーし!それなら、俺が案内するよ!」
ミリオは明るく笑った。
個性を失った彼は、現在、学校を休学している。以前のようにヒーローを目指して授業を受けることはできなくなってしまったが、それでも彼の前向きさは失われていなかった。
「壊理ちゃんが文化祭に行けるなら、僕がつきっきりで案内してあげるよ!」
「……ミリオさんが?」
「ああ!おいしいものを食べて、楽しいものを見て、いっぱい遊ぼう!題して、壊理ちゃんと文化祭デートだ!」
「デートってなんですか?」
壊理は聞きなれない言葉の意味をミリオに尋ねた。
「年頃の男女の蜜月の事さ!!」
「だ、男女の蜜月!?」
緑谷が思わず声を裏返した。
「通形先輩、それはちょっと……!」
「ん?何か問題あるか?」
「いや、問題というか、その……!」
「もちろん、壊理ちゃんが疲れたら休憩してもいいし、怖くなったらいつでも帰ろう。無理はしない。約束だ!」
壊理は、ミリオの顔をじっと見つめていた。
その瞳に、少しずつ光が差し込んでいく。