【WINDBREAKER】風鈴高校の紅一点🎐𓂃𓈒𓂂
第2章 獅子頭連編
十亀「ちょっと、ごめんねぇ。」
その呟きを最後に、十亀は一切の反撃をやめ、静かにステージから降りた。うつむいたまま顔を上げることもなく、まっすぐに鹿沼と有馬の元へと歩み寄っていく。その表情を窺うことはできないが、周囲の空気を凍りつかせるほどの、黒く狂おしい憤怒のオーラが、彼の背中から立ち込めていた。
有馬「……ひっ!」
鹿沼「………っ」
十亀「正直、不思議だった。風鈴が理由もなくこっちひいるのがぁ。お前らぁ、あそこで何やってた。」
一拍の静寂のあと、十亀の底冷えするような声が響く。
十亀「答えろ。」
鹿沼「み、見かけない中坊がいたから…ちょっと、遊んでて…」
有馬「で、でも! 最初に言い出したのは猿渡なんだ……っ!」
有馬が言い終わるのと同時に、十亀の拳が容赦なく二人の顔面を容赦なく打ち砕いていく。鈍い打撃音、吐血の音。そして二人のぐしゃぐしゃとした嗚咽が、静まり返った館内に残酷に響き渡る。まるで断末魔のようなその悲惨な声に、私は思わず両手で耳を強く塞いだ。
「…………いや…っ」
周囲には聞こえない程の、くぐもった震え声が喉の奥から溢れ出す。
彼らの闘いを、自分の過去に重ねてはいけないと分かっているのに。目の前で響く二人の悲鳴にならない声が、どうしようもなかった「あの時の自分」と重なって仕方がなかった。
――この場から、今すぐ逃げ出したい。
持ってはいけないと分かっているはずのその弱音に、押しつぶされそうになっていく。
蘇枋「…ちゃんっ!」
「……っ!!」
すぐ隣で、蘇枋君に肩を大きく揺さぶられ、ハッと我に返る。
蘇枋「俺の声 聞こえる?」
「……はい。大丈夫です…」
蘇枋「…なら、よかった。」
「…ちょっと、外の空気を吸いに行ってきます。」
楡井「……あれ、椿さんっ!?」
蘇枋「にれ君。…今は行かない方がいい。」
楡井「けど、いま一人になるのは…」
蘇枋「……」
みんなの心配する声を背に、はその場から逃げるように劇場の外へと飛び出した。
「ハァ………ハァ…」
桜ちゃんと見てろと言われたばかりなのに。あの恐怖から目を背けたくて、みんなの前から逃げ出してしまうなんて。悲しいわけじゃないのに、熱い涙が次から次へと溢れて止まらなかった。