【WINDBREAKER】風鈴高校の紅一点🎐𓂃𓈒𓂂
第2章 獅子頭連編
(もしかしたら、負けてしまうかもしれない)
そんな最悪の予感が頭をよぎり、恐怖で思わずギュッと両手で目を覆った、その時―。
桜「おい、てめぇ」
低く、けれど鋭く突き刺さる声が響いた。
遥「目、逸らさねぇで ちゃんと見ろ。」
ハッとして指の隙間から前を見ると、先程まで壇上で戦っていたはずの桜が、いつの間にかの目の前に立っていた。
桜「必死に戦ってるやつから目を背けるなんてのは、戦ってる相手にも俺に対しても失礼だ。」
楡井「さ、桜さん…!でも、椿さんも心配で……」
蘇枋「……」
桜「別に、怒ってるわけじゃねぇよ。」
楡井「も、もっと言い方優しく…!」
蘇枋「………さく…」
「うん……ごめんね。失礼なことして…」
楡井「……」
蘇枋「……」
自らこの場所に来ると決めたのに、目の前の現実から逃げるように目を背けるなんて。戦っているみんなの覚悟と努力を、我が身可愛さに愚弄するような最低な行為だ。
桜君が怒るのは当然だし、怒られても仕方がなかった。
――私は、本当にどうしようもない人間だ。
私は震える手を止め、桜と向かい合うようにその場にしっかりと立ち上がった。血に染まった桜の頬に両手を伸ばし、その温もりを確かめるようにそっと優しく手を添える。
「ばかっ! 血で汚れるだろうがっ!」と少しだけ慌てたように怒鳴る桜を制すように、は彼の唇の端に滲んだ赤い血を、自分の親指の腹でそっと拭い取った。
「勝って帰ってくるって、信じてるからね。」
まっすぐに告げた私に、桜は少しだけ目を丸くしたあと、照れくさそうにの頭を乱暴に、でもどこか優しく数回撫でた。そして、そのまま背筋を伸ばして再び壇上へと戻っていく。
その背中は、先程までよりもずっと大きく、どこか誇らしげでイキイキとして見えた。
壇上に戻った桜君を待ち構えていたように、十亀がニヤリと笑みを深める。
十亀「オセロ君さぁ、公衆の面前で女の子とあんなにイチャついといて……もし俺に負けたりしたら、めちゃくちゃダサいよねぇ?」
桜「はぁ? 『力の絶対信仰』なんて語って一番ダセぇことしてるお前に、俺がぜってぇ負けねぇんだよ!」
熱を帯びた声がグラウンドの空気を切り裂き、決着へ向けた最後の戦いが再び幕を開けようとしていた。