【WINDBREAKER】風鈴高校の紅一点🎐𓂃𓈒𓂂
第2章 獅子頭連編
有馬「ったく。まじで癪に障る目ぇしてんなぁ。」
杉下「………」
ステージの上で不敵に言い放つ有馬の挑発を、杉下は相変わらず無言のまま見据えている。張り詰めた緊張感が最高潮に達したその瞬間だった。有馬が、突然動きを止め観客席の方へと大声を張り上げた。
有馬「…っ!! おい、梅宮! どうした!!」
杉下「……っ!」
その言葉に釣られるように、も思わず梅宮へと視線を走らせる。しかし、そこには先程と変わらぬ穏やかな様子で、ゆったりと座席に腰を下ろしている梅宮の姿があるだけだった。
――え? 何も……。
梅宮の無事を確認しようと、ほんの一瞬。杉下がわずかに視線を逸らした その隙を逃さず、有馬の右ストレートが杉下の顔面に深く突き刺さった。
鈍い衝撃音が会場の空間に響き渡る。なんて卑劣で、なんて卑怯な闘い方だろう。相手の仲間への気遣いや動揺を誘うような、そんな正々堂々のかけらもないやり方に、の胸の内で怒りと悔しさが激しく渦巻いた。あまりの汚さに、腸が煮えくり返るような思いがする。
有馬「喧嘩中に、よそ見すんなよ馬鹿が。」
ヘラヘラと吐き捨てるその言葉に、怒りで全身が震え、自然と両手に力が入る。強く握りしめた拳の爪が、自分の掌に深く食い込んでいるのさえ気づかない。痛みなどどうでもよかった。目の前で行われている許しがたい不条理な闘いに、我慢できず思わず立ち上がろうとした、その時。
有馬「…っ……えっ?」
杉下「……さん…だ…」
信じられない光景が目の前で繰り広げられた。杉下の顔面を殴り抜いたはずの有馬の腕が、ガッチリと鉄の万力のように掴まれ、一歩も身動きが取れなくなっていたのだ。そして、冷徹に目の色を変えた杉下が、そのまま有馬の顔面を巨大な手で片手で鷲掴みにし、有無を言わせぬ怪力で床へと力任せに押し付けた。
「……っ!?」
桜「…………よっわ」
杉下「梅宮“さん”だ……馬鹿が。」
低い怒気を孕んだその声が、静まり返った廃映画館に冷たく響き渡る。
顔面から床へと凄まじい勢いで叩きつけられた有馬は、そのままガクッと力を失い、ピクリとも動かなくなった。
圧倒的な静寂のあと、は波立つ息を整えながら、目の前の光景をただ見つめた。
「杉下君が……勝った……」