【WINDBREAKER】風鈴高校の紅一点🎐𓂃𓈒𓂂
第1章 出会い
「……蘇枋君」
カップをソーサーに置いた彼女が、少しだけ伏し目がちに呟いた。
蘇枋「ん?」
「あの……連絡先、教えてもらえませんか?」
予想外の言葉に、蘇枋は目を丸くした。まさか、自分がずっと聞きたかった本題を、彼女の方から切り出してくれるなんて思ってもみなかった。先程からの不意打ちの可愛さといい、今のまっすぐな瞳といい、彼女は本当に油断がならない。胸の奥が、くすぐったいような甘い熱を帯びる。
蘇枋「教えてあげてもいいけどさ……その代わり、俺とももう少しフランクに話してほしいな」
「フ、フランクに?」
蘇枋「うん。敬語も可愛いんだけど、なるべく減らしていこうね。」
「はい……」
蘇枋「うん。そしたらQR読み取るから、スマホ貸して?」
少し戸惑いながらも差し出された彼女のスマホを受け取り、画面にかざす。すぐにポップアップで彼女のアイコンが浮かび上がり、無事に連絡先の追加が完了した。
「……登録しました。なにか送りますね」
蘇枋「うん。」
――またすぐに敬語に戻ってる。
長年の癖はそんなにすぐ直らないらしい。本当は、彼女が敬語のままでも十分に可愛いらしい。そのままでも良かったはずなのに、桜君の前ではあんなに自然体で、時には言い返すくらいフランクに話すのに、どうして俺の前ではいつまでも一線を引いたような敬語になってしまうんだろう。理由は分からないけれど、それがほんの少しだけ、胸の奥をチクリと引っ掻いた。
(……なんか、我ながら器が小さいな)
連絡先を交換したかったのは、ほかならぬ俺自身。彼女の前でこんな風に独占欲を滲ませて、勝手にモヤモヤしているなんて、自分でも柄にもなく女々しいことを考えているなと思う。
スマホをそっと返すと、彼女は嬉しそうに画面を見つめて小さく微笑んだ。その柔らかな表情を見ていると、ささくれ立っていたはずの気持ちも、結局はあっという間に溶かされてしまうのだった。