【WINDBREAKER】風鈴高校の紅一点🎐𓂃𓈒𓂂
第1章 出会い
マグカップから立ち上る湯気を眺めながら、蘇枋は「どうしてこうなったのか」静かに考えていた。
事の発端は、マンションのエントランスで彼女を驚かせてしまったことだ。引き返して彼女の元に戻ったは良いものの、あの時浮かべた彼女の表情は、予想をはるかに超えて恐怖に満ちていた。
ーーあんな顔をさせるつもりなんて、微塵もなかったのに。
普通の驚き方ではなかった。きっと、夜の暗さや背後から来る気配に対して、過去に深いトラウマを抱えているのだろう。出会った頃から時折見せる怯えた仕草や、喧嘩の気配がしただけで身体をこわばらせて震わせる姿が、ふと脳裏をよぎる。
そんな彼女が獅子頭連とのタイマン勝負の場に連れて行かれるなんて。不憫でならないし、一人で帰ってきたらこの部屋で、どれほど不安に押し潰されていたかわからない。そう思ったら、放っておけず、ここまでついてきてしまったのだ。
「蘇枋君。よかったら、クッキーもどうぞ。」
蘇枋「うん、ありがとう。お構いなく。」
明るく振る舞ってくれる彼女の優しさに救われたが、直前までの赤面するようなやり取りを思い出してしまい、どうにも気まずさが抜けきらない。
「ここのクッキー、すごく美味しいんですよ! 〇〇ってカフェのやつなんですけど、そこはショートケーキも絶品で…」
楽しそうに目を輝かせて語ってくれるというのに、変に意識してしまっているせいで、話の内容がまったく頭に入ってこない。元々は、彼女にどうしても聞いておきたいことがあって引き返してきたはずなのに。
肝心の質問を、どう切り出せばいいのか 蘇枋は分からなくなっていた。
人と上手く話すことなんて、これまでの人生で一度も難しいと思ったことなんてなかった。しかし、彼女を目の前にすると、自分のペースがすべて狂ってしまう。そんな不器用な自分に、内心で小さく苦笑するしかなかった。