【WINDBREAKER】風鈴高校の紅一点🎐𓂃𓈒𓂂
第1章 出会い
「そういえば、聞きたい事があったんだけど」
突如、背後から降ってきた男性の声。心臓が跳ね上がり、振り返りたいのに恐怖で足がすくみ、首すら動かせない。背後の人物が誰なのかも分からないまま、得体の知れない気配が背筋を這い上がる。どうすればいいのか分からないまま、はその場に立ち尽くしきゅっと強く目を瞑った。
蘇枋「ごめんね。驚かせちゃったかな。」
聞こえてきたのは あまりにも聞き慣れた穏やかな声だった。恐る恐る声のする方へと視線を向ける。そこには、いつも通りの優しい笑みを浮かべた蘇枋が立っていた。
「…蘇枋君」
蘇枋「ううん。ディカプリオさんだよ!」
ふっと相好を崩す彼に、張り詰めていた緊張が一気にほどけていく。
先程、帰ったはずの蘇枋がなぜ今ここにいるのか。疑問は浮かんだものの、それ以上に孤独の底から引き上げてくれたような強烈な安心感に胸が熱くなった。安心感からか、足の力がすっと抜け、はその場にへたり込むようにしゃがみ込んでしまった。
蘇枋「ごめんね。驚かせるつもりはなかったんだ。」
「……いえっ…大丈夫です…」
蘇枋「…全然大丈夫じゃないね。」
彼が怖かったわけじゃない。彼を拒絶したいわけでも決してない。誤解されたくなくて必死に言葉を紡ごうとするけれど、震える喉からは掠れた声しか出てこない。
「……あのっ、私…」
蘇枋「無理して話さなくていいよ。本当にごめんね。怖い思いをさせて」
の小さな肩が震えていることに気づいた蘇枋は、そっと屈み込み、優しく問いかけた。
蘇枋「触れても いいかな?」
その気遣いに、は小さく頷いた。すると彼は、壊れ物を扱うように彼女をそっと優しく抱きしめてくれた。彼の胸元から伝わる体温と、タッセルピアスの感触が、張り詰めていた恐怖の糸を少しずつ溶かしていく。数秒後、蘇枋は名残惜しそうに腕を解き、まだわずかに震えが残る彼女の頬にそっと手を添えた。その瞳には、どこまでも深い慈愛の色が湛えられていた。
蘇枋「部屋まで送るよ。」
彼の差し出してくれたその温もりと優しさに甘えるように、はそっと手を伸ばした。夜の冷気を忘れさせてくれるような温かい手と手をしっかりと繋ぎ、静かな廊下を二人並んで部屋の扉へと歩いていくのだった。