【WINDBREAKER】風鈴高校の紅一点🎐𓂃𓈒𓂂
第1章 出会い
桜「お前ん家、本当にこっちなのか?」
夜風を切り歩く背後から、桜の不満げな呟きが聞こえてくる。何か気になることでもあるのだろうかと思いながら振り返ると、彼は少し眉をひそめて辺りを見回していた。
「お家、ここ」
数十分ほど並んで歩きようやくたどり着いたのは、が一人で暮らしているマンションだった。この辺りはコンビニやドラッグストア、スーパーや病院が揃っていて、日中はとても賑やかな場所だ。それに、お店の明かりや街灯が常に灯っているため、夜になってもそこまで暗く沈み込むことはない。一人暮らしをするには、安心できる環境だった。
蘇枋「素敵なお家だね。」
桜「お前の部屋。あの、灯りがついてないとこか?」
「うん。そうだよ」
桜「一人暮らしなのか?」
「そうだけど……」
桜「いや、危ねーだろ! 女一人で住まわせるなんて!」
楡井「たしかに。明るい場所とはいえ、この街は変な輩も多いですからね。ご両親とか、心配しなかったんですか?」
楡井の素朴な疑問に、胸の奥がキュッと締め付けられるような冷たい感覚が広がった。
「…うちは、ちょっと特殊なの。」
ぽつりと零したその言葉に、桜と楡井の表情が強ばった。特殊という言葉の裏にある重たさを察した複雑な感情が入り交じり、二人は言葉を失ったようにその場で立ち尽くしていた。二人の変な空気を感じ取り、は慌てて笑顔をつくった。
「送ってくれて、本当にありがとうございました。」
桜「明日は遅刻すんなよ。」
楡井「明日、トンネル前で待ち合わせですからね!」
蘇枋「ちゃんも、温かくしてゆっくり休んでね。」
「はい。おやすみなさい。」
これ以上深く詮索される前に、はエントランスへと駆け込んだ。自動ドアが閉まり、ロビーのガラス越しに彼らの姿が見えなくなるまで、小さく手を振り続ける。やがて、その頼もしい背中が夜の闇に溶けて見えなくなった瞬間、胸の底を抉るような、冷たくて重たい虚無感が突然押し寄せてきた。
また、一人になってしまった…
賑やかな温もりから切り離され、静寂に包まれた空間に放り出されたような孤独感。ざわつく胸の鼓動をごまかすように、ゆっくりと踵を返し、冷たい光を放つエレベーターのボタンを押した。