【WINDBREAKER】風鈴高校の紅一点🎐𓂃𓈒𓂂
第1章 出会い
「大丈夫? 送るよ」
そう言って、そっとの顔を覗き込んできたのは、隣で優しく微笑む蘇枋隼飛だった。
「いや……でも…」
桜「お前、夜道が怖ぇんだろ。」
楡井「えっ! 桜さんも蘇枋さんも、なんで分かるんですか!?」
楡井の素直な驚きの声をよそに、蘇枋は困ったようなそれでいてあたたかな笑みを深める。
蘇枋「こんなに暖かい夜なのに、身体を抱えて小さくなってるのは不自然だからね」
桜「それに、何よりめちゃくちゃ怯えた顔してんだろうが。」
自分では隠しているつもりだった震えも、強ばった表情も、彼らにはとっくに見透かされてしまっていたらしい。は返す言葉もなく、ただ俯いて唇を噛み締めた。
蘇枋は獅子頭連の一件もあり、今日のところは有無を言わさず送らせてもらうと静かに微笑んだ。桜も「最初から拒否権なんてねぇからな」とぶっきらぼうに悪態をつきながらも、の歩幅にしっかりと合わせようと足を止めている。
「…うん。ありがとう。」
楡井「僕も、微力ながらお供させていただきます!」
「楡井君も、ありがとうね。」
仲間たちが織りなす優しさが、冷えた夜気に凍てつく胸の奥をじんわりと温めていく。自分はこんなにも優しい人達に囲まれていてもいいのだろうか。こんな風に、甘えてしまってもいいんだろうか。不思議なことに、桜や蘇枋達と一緒にいると、あんなにも深く心に突き刺さっていた過去の嫌な記憶さえ、一瞬だけ色褪せて忘れていられる時間があることに気づく。今までの一生の中で、誰かと共にいる温かさなんて知らなかったというのに。
けれど、胸のどこかで冷たい警鐘が鳴り響く。あまりに気持ちが入りすぎてしまってはいけない。これ以上、彼らとの距離が近くなりすぎてしまったら…。万が一のことがあったとき、耐えられないほどの喪失感に溺れてしまうかもしれない。だからこそ、踏み込みすぎてはいけない一線があることを、は痛いほどよく分かっていた。温もりを求めたい弱さと、傷つきたくない防衛本能の間で、彼女の心は静かに揺れ動いていた。