【WINDBREAKER】風鈴高校の紅一点🎐𓂃𓈒𓂂
第1章 出会い
「待てゴラァッッ!!!!!」
トンネルの向こう側。獅子頭連の領土から、心臓を抉るような叫び声が届く。視線を向けると、一人の少年が必死の形相でこちらへ向かって走ってくるのが見えた。背後には、彼を追い回す不穏な影。
柊「そんなところで何やってる!? 早くこっちに来い!!」
柊の鋭い声が飛ぶ。けれど、逃げてきた少年の足がもつれ、地面に倒れ込んだ。
楡井「ああ!後ろッ!オレンジのスカジャン……獅子頭連っす!」
楡井の悲鳴が重なる。もうダメだ、追いつかれる。最悪の光景を予感して目を逸らそうとしたその瞬間。
――ドカッ!!!!!!
重い衝撃音が、鼓膜を震わせた。
驚異的なスピード。瞬きする暇さえなかった。倒れた少年と、迫り来る「オレンジの影」の間に、二つの背中が割り込んでいた。桜と杉下。二人が同時に放った豪快な飛び蹴りが獅子頭連の男達を鮮やかに吹き飛ばしたのだ。
楡井「あ、相手のシマで、こちらから手を出すなんて……」
楡井が呆然と呟く。風鈴高校に入学してまだ数時間。この街のルールすら完全に把握していない一年生が、隣接する巨大勢力に「先制攻撃」を仕掛けたのだ。その事実に、は息を呑むことしかできなかった。
「ちゃん」
不意に、横から柔らかな声がかかる。
蘇枋「おいで。俺の後ろに」
声をかけたのは蘇枋だった。彼は彼女の強張った身体を察したのか優しく促し、その背中での視界を守るように立ちはだかった。彼は本当に、の心を見通しているのだろうか。そのおかげで、は震える身体を落ち着かせ、彼の背後に身を隠すことができた。
桜「何言ってやがる。こいつが身内なら――」
男達蹴散らした桜が昏い闘志を宿した瞳で振り返る。
桜・杉下「「手はもう、出されてる」」
桜と杉下の声が、低く重なった。
まだ、始まったばかりだというのに、これから巨大な嵐が吹き荒れる。そんな確信に近い予感を抱きながら、は二人の少年の、ひどく頼もしくそして危うい背中をじっと見つめていた。