第6章 歪を彩る
「ふふっ。ほら成恢さま、とっても綺麗。ね?」
紫がかった青白さに濁った爪が、少しずつ人工的な紅に染め上げられていく。
死人もかくやな青紫色の皮膚の上に浮かぶ、どす黒い血管。
暗く不気味な肌色の先で、爪だけが息衝くような鮮やかな赤を帯びている。
調和などするはずもない。
本来、人の肌を"正しく"美しく彩るための紅が、これほどまでに不穏な取り合わせを生むことなど誰が想像しただろう。
シキだけが、それを少しもおかしいとは思っていないのだ。
むしろ、これほどよく似合う色はないとさえ思っているのだろう。
成恢の爪の一枚、一枚に紅が重なるたび、彼女の瞳には輝きが増していくような明るさが見て取れた。
成恢は、己がこの女にとってどのように映っているのか、ますますわからなくなる。
醜悪と呼ぶ他ないこの肌を、嬉々として美しく飾ろうとするシキの満足そうな微笑みこそが、いっそ目に毒であるかのようで――ああ、つくづく酔狂なことだ。
この女に出会わなければ、こんな不可解な感傷に苛まれることもなかったというのに。
成恢の後悔ともつかぬ嘆きなど知る由もないシキは、反対側の手にも呑気に紅を塗りたくっていく。
「私にも温度がわかればなー。成恢さまの手って、いつも冷たいんですか?それとも、あったかいのかな」
「……さてな。……難儀なものだな、温痛覚を持たぬというのも。お前は少しも気にしておらんのだろうがな」
「そうですね。だって気にしたって、ないものねだりにしかならないから……あ」
シキが、ふと動きを止めた。
「どうした?」
「成恢さま、ここ……前より指先が少し青黒くなってますね」
「!」
成恢の利き手の爪の生え際を親指で緩く撫でながら、前回の記憶との僅かな差異を見つけ出したシキの発言に、成恢の目がほんの僅かに瞠った。