第6章 歪を彩る
日々の実験後における身体の手入れは欠かしたことがない。
当然、シキが指摘した変化は、成恢自身も把握済みである。
軽微な変色程度であれば、自然と薄れて消えるので放っておいても何ら問題はなかった。
だが……。
「……よくわかったな」
思わず零れ出た成恢の言葉にシキが顔を上げる。
自然と目が合えば、屈託なく笑いかけられ、成恢は僅かに眉間に皺を寄せた。
そもそも、成恢の特殊な肌色に対して、これほど些細な色むらを見つけ出すのは毒に精通している者であっても難しいはずだ。
シキは毒を無効化する体質でこそあっても、毒自体には何の知識も持たない素人であり、引き起こされる悪影響の質や幅も然りだった。
成恢直属の毒兵器部隊に所属する面々ならば、あるいは――否、やはりシキがどうかしているのだ。
――――この女が、どこまでも成恢のことしか頭にないから。
成恢に対してのみ発揮される、シキの特異な目ざとさに驚き半分――否、それなりに引いた気持ちが七割を超した眼差しを差し向けるも、シキは「すごいですか?」と何故か誇らしげだ。
韓軍内でシキを「やべー奴」と称する兵士は少なくないが、成恢も今まさにその言葉を声に出して当て嵌めたいくらいだ。
だが……不思議と嫌悪感は湧いてこなかった。
「…………。実験の副産物が皮膚に触れただけに過ぎん。いちいち騒ぎ立てる程のものでもない」
「ふーん、そっかぁ」
感心とも、納得ともつかぬ声色で相槌を打ったシキは、親指の腹で成恢の手の甲を一筋なぞる。
「成恢さま、ずーっと頑張ってますもんね」
シキにとっては、さも何気ない一言だったのやもしれない。
しかし、その一言は――この時、確かに成恢の胸中に仄かな感慨を浮かばせた。