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死毒に彩なす

第6章 歪を彩る


功労金も然りであり、毒の研究費や維持費の名目で成恢が一括して受け取っていた。

そこからシキの生活や武具の手入れなどに必要な費用を差し引き、残りは成恢の毒の原材料を確保するための裏の補給路へ回している。

こちらに関しても、金を蓄えたところで使い道はないと考えているシキが異を唱えたことはない。
持ち腐れるくらいならば成恢に捧げる方が余程有用であるくらいだと考えるシキにとっては、どう転んでも都合が良かった。

成恢の毒の研究発展は、ひいては国の為にも繋がるとあらば――シキ自身は国に対して、これっぽっちも関心を持っていなかったが――彼女の判断を"健気な美談"として仕立て上げ、情報を操作することは容易だった。


――――ただし、そんな彼女にも求めるものが一つだけあった。

それこそが、この成恢の爪を彩るための爪紅である。


どれほど物欲がなかろうと、シキが過酷な戦場で命を賭けて戦い抜き、己の手駒として有用性を示し続けながら戦果を挙げている事実は揺るぎない。

合理的な損得勘定に徹しているようで、その実、成恢とてシキの頑張りに報いてやりたいという情くらい持ち合わせている。

だからこそ成恢は、差し引いた金の中から「好きに使え」と一部の金をシキの手元に直接渡していた。
それを何に使おうが、あるいは使わずに捨て置こうが、シキの自由にさせていたのだ。

また、金とは別に「何でも所望のものを褒美として取らせる」と直接シキに告げたことがあった。

「えー……?うーん、そう言われても特にないです」と、深く考えることもなく首を横に振るばかりのシキを言いくるめるのは中々に苦労したが――後日、シキは件の爪紅の小壺を抱えて己の元へとやってきた。

その時、成恢は少なからず意外に思っていたのだ。
他者にも自分にも全く興味を示さないこの女が年相応の洒落っ気を持ち合わせていたとは――と。

己の爪を赤く染める様を見せにきたのだろうシキの姿を頭の片隅で思い描いたのも束の間。
シキが弾んだ声で口にした言葉に、成恢は気が遠くなるような眩暈を覚えることとなった。
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