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死毒に彩なす

第6章 歪を彩る


シキが持参した爪紅は、貴族が使うような高級品ではないものの、都の裕福な町人や後宮の侍女たちが愛用する、確かな質の保たれた逸品だ。
本来であれば、そうした女たちにこそ使われて然るべきものであり、自分のような男の爪に塗るものなどではない。

常識や世俗の道理に照らし合わせれば、何もかもが不釣り合いな現状だった。

だというのに、何一つとして異質に思わぬシキだけが胸を弾ませている。
ニコニコと陽気な笑みを広げるシキを見ていれば、自然と溜息が零れ出る。
観念にも似た心地で、成恢は自由な方の片手に顎を乗せた。

なんでもいいから早く終わらせてしまえ……。

そう思いながら、シキの掌に委ねたままの手を好きにさせてやった。


――――この行為は、己がシキと取り決めた"報酬"の一環だったからだ。


戦時において、シキの韓軍内での立ち位置は特殊であった。
成恢の隊に直属しているものの、然るべき階級を持たぬシキは、一貫して特殊な遊撃兵として扱われている。

それは彼女が一切の毒が効かぬ特異体質を以てして、成恢の毒兵器運用と一体化した戦力として機能していたからだ。

此度の戦でも、決定打たる大将首を挙げたのは別の将校であったが、本陣に迫る敵軍の一角を切り崩したのはシキだった。
無論、成恢の毒兵器による後ろ盾があってこそだが――誰にも真似できぬ唯一無二の働きを見せるシキが現在に至るまでに討ち取ってきた首級の中には千人将はおろか、三千人将の位を持つ敵兵すら含まれる。

本来ならば、戦で武功を立てれば相応の階級や、それに応じた部隊を与えられるものだ。
しかし、シキに昇進令が下されたことは一度もなかった。


――――成恢が裏で手を回していたからだ。


理由は、大きく分けて二つある。
一つは、シキには将や長として人を率いる適性がてんでなかったことだ。
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